くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ウッディ・アレン 夢と犯罪」「やさしい嘘と贈り物」

夢と犯罪

ウッディ・アレン 夢と犯罪」
平凡な兄弟がふとしたことから墜ちていく姿を描いた物語である。
些細なきっかけから始まり、夢をつかんだと思われた二人が抜けられない現実に打ちひしがれていくくだりをウッディ・アレンはクールな画面で見つめていく。

ギャンブル好きの弟、野心のある兄、そして実直な父と富を追い求めるのに手段を選ばない伯父。物語のきっかけはギャンブル好きの弟が作ってしまった借金。その相談をした伯父は自分に都合の悪い男を殺してくれと兄弟に頼む。何度もためらいながら、ことを成し遂げた二人。
念願だった投資ビジネスの資金を得、理想の女性を手に入れるが、弟は罪の意識にさいなまれ精神を病んでいく。

そして迎えた結果はあまりにもあっけない。これがウッディ・アレンならではの都会的な視点なのだろうか、都会の片隅で起こったたわいのない出来事としてすませてしまう怖さがこの映画には漂っているように思います。
まさに、ウッディ・アレンならではの淡々とした中に潜むミステリアスな現実。ラストシーンに見せるあっけなさはあまりにクールすぎるように思えなくもないですが、悲劇として見えないところが何ともいえない作品でした。


もう一本が「やさしい嘘と贈り物」

非常にファンタジックな映像で物語は幕を開けます。イルミネーションの明かりがともるクリスマス前の郊外の町。カメラはそのほのぼのした景色からゆっくりと一軒の家に入っていきます。そこには一人の老人ロバート(マーティン:・ランドー)が自分宛のクリスマスプレゼントを包装しています。
彼はスーパーで働いているのですが、たまたま見かけた一人の女性メアリー(エレン・バースティン)が向かいに引っ越してきたところから物語はほのぼのしたラブストーリーの様相を呈していきます。

心がときめくと、ぱっと家のイルミネーションがともったりするテクニカルな映像、さらにスプリット画面で二人の老人の出会いや会話をとらえたりと、ちょっと技巧的な演出が施されて、夢物語のような老人たちのラブストーリーが展開していくのですが、どこかおかしい。それは見ている私たちも最初から気がつきます。
周りの人々の年齢がちぐはぐだし、??というような場面が随所にある。そのために、あっといわせるクライマックスがちょっと弱いですね。

とはいえ、長編第一作という若干24歳の新人監督らしいチャレンジ精神満載の画面づくりは楽しいです。
雪のシーンをまるでおとぎ話のようにはめ込んだり、ロバートが真っ赤なダウンジャケットに身を包みメアリーと真っ赤なそりでゆき遊びをしたり、黒と赤の対比などの色彩演出もなかなか見物です。まぁ、ちょっと鼻につくといえばつきますが。

そして迎えるラストシーン、そうだろうと思っていたラストではありますが、たくさんのクリスマスプレゼントを順番にあけていく中に冒頭の自分宛のプレゼントの中身が明らかになり、一気にあついものがこみ上げてくる展開はなかなかのものです。
そしてすべてが明らかになりエンディング。

さすがに監督が若すぎるせいか、年齢を重ねた老人同士のラブストーリーの機微が今ひとつ作り物にしか見えないのは残念ですが、素直に楽しんで感動する映画だと思います。あまり理屈はやめましょう、この映画に関しては。そんな作品でした。