くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「新選組始末記」「お嬢吉三」

新選組始末記

新選組始末記」
幕末の京都を舞台に新選組の姿を描いた三隅研次監督の娯楽時代劇である。
原作は子母沢寛で、勧善懲悪の展開ながら武士の時代の終焉と町民の代替する姿がいたる所のせりふやショットに見え隠れする。

物語は新選組に入らんとする決意をした武士山崎(市川雷蔵)の姿を通して、新選組が次第にその勢力を安定させていく様を描いている。そして山崎を慕う志満を医学を志す女性として登場させ、勤王派の陰謀を突き止めて、京都の炎上をくい止める池田屋騒動をクライマックスにストーリー展開する典型的な娯楽時代劇である。

武士の生き様を一方で勤王の志士たちのかたくなな信念と対峙し新選組の新たな武士の存在をやや比喩的に配置しながら、次第に武士の考え方、存在が廃れていく様子が見事に描写されています。
際だったショットや演出などはみられませんが、しっかりとした時代劇のおもしろさを満喫できる一本でした。


「お嬢吉三」
今ではすっかりすたれてしまった痛快娯楽時代劇である。
笑いあり、涙あり、チャンバラあり、そして悪徳侍、悪徳町人、主人公を慕う美女、まさしく映画が娯楽であった時代の典型的な登場人物と、たわいのない勧善懲悪の世界が臆面もなくひたすら楽しませるために展開するストーリーは見ていて爽快である。

江戸の牢獄を一年半ぶりにでた主人公たち三人は自分たちをお縄にした悪徳侍とその巾着の町民を痛い目に遭わせて旅に出る。そこでであった一人の女を助ける中で繰り広げられる騒動は、まさに当時、時代劇がテレビや映画の中心であった時代を見事に思い出させてくれます。

東海道を進む主人公たちの背後に何度となく映る美しい富士山の景色は、まさか特撮でもあるまいに、当時の日本の情景をそのまま残しているようですごくノスタルジックな感に陥ったりもします。これだけでもこの映画を見た甲斐があったような気もしますね。

田中徳三監督の演出は取り立てて秀逸なものはありませんが、チャンバラシーンをとってもどこか今の時代劇とは違った豪快なカメラワークやら、殺陣ののおもしろさ、娯楽とはこれだといわんばかりの群衆演出の見事さは現代ではお目にかかれないものではないかとも思います。
やはり、日本映画史を語る中で本日の二本はみて損のない作品であったように思います