最初に見たのは20年近く前で、当時はビリー・ワイルダーという監督名だけで見に行ったのですが、なんとなんと、今日見てこんなすばらしい映画を忘れていたなんてと胸が熱くなってしまいました。
この映画、マリリン・モンローのセクシーな魅力だけのコメディであるかのような印象が強いですが、そんなことはありません。I・A・Lダイヤモンドの脚本とビリー・ワイルダーの演出がいかに才能に恵まれたものであったかをうならせる傑作なのです。
出だしは霊柩車を追いかけるパトカーのシーンで始まります。スピーディな中にどこかボスであるスパッツ(ジョージ・ラフト)以外の部下が妙に間抜けに見えるのがなんともほほえましく、スパッツの声が低い渋みのある音質で迫力があるので尚いっそうコミカルに見える。
そんな導入から、酒場のシーン、そして主人公ジェリー(ジャック・レモン)とジョー(トニー・カーチス)が楽団でさりげなく紹介される場面へとどんどん物語が進んでいくのです。
機関銃のようなセリフの応酬の面白さと次々と主要人物が交差しながら登場していくストーリー展開がとにかくハイテンポで、そこに繰り広げられる絶妙の笑いがひと時もスクリーンから目を話せません。
もちろん、マリリン・モンローふんするシュガーがなんともかわいらしく、セクシーだけが売り物の並みの女優ではないことも証明してくれます。
中盤に入っても物語の迫力は衰えることなく、次第に本気で恋を知り始めるジョーとシュガーの心の変化もそれとなく胸に響き始める後半は絶品です。そこにからむジェリーとオスグッド3世(ジョー・E・ブラウン)の軽妙な物語もスパイスになって最高。
しかも背後にある物語はギャングのボス、スパッツがジョーとジェリーを抹殺せんとする恐ろしいサスペンスなのだからこれがまた笑えるのですよね。
ジョーが女装から男装に戻ってシュガーと会うために自転車で滑走する場面がほほえましく、この伏線がラストでジェリーとオスグッド3世が乗るボートへジョーが飛び乗りマリリンモンローが自転車で駆けつけるという絶妙のショットで締めくくる。背筋がぞくっとするほど計算されつくされた演出、脚本に胸が熱くなるのを覚えました。
さらにボートの上でのエンディングの見事なこと。これが名作、傑作といえる映画だと思います