くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ショウほど素敵な商売はない」「去年マリエンバードで」

ショウほど素敵な商売はない

「ショウほど素敵な商売はない」
古き良きアメリカ映画、黄金期の夢の映画、これがアメリカ映画といわんばかりの絢爛たるミュージカルである。
物語はドナヒュー一家というショウビジネスで大人気の夫婦とその子供たちの物語である。そこには子供たちの成長によって起こる恋の問題、仕事の問題などが入り交じってくるが、ある意味一つの家族の物語でありホームドラマのごときものです。

とはいえ、卓越したダンスシーンの数々、華やかそのものの舞台シーンの数々がところ狭しとスクリーンに繰り返される様は圧巻である。しかもダンス、歌、パフォーマンスそれぞれが映画の世界以前に超一流のスターたちの演技と踊りに圧倒されます。これが本場ハリウッドミュージカルといわんがごとしです。

見ていて、繰り返されるミュージカルシーンに少々飽きてきても良さそうなのに飽きてこない魅力はこれこそ本物の迫力というのでしょうね。そして中心の物語の脇に登場するマリリン・モンローの存在感は最高。これが夢の工場ハリウッドの映画なのでしょう。
ストーリーはこじつけたようなハッピーエンドで幕を閉じますが、見終わって晴れやかになる作品だったと思います。しかもスクリーンでみてこその味わいがあるのはやはり当時の映画作りの貫禄がもたらしたものでしょうね。


「去年マリエンバードで」
30年ぶりくらいでスクリーンで見直しました。先日、デジタルマスターしたDVDで見直していたのでだいたいの場面は繰り返し思い起こしていけたのですが、やはり、スクリーンでみると違いますね。
アラン・レネの卓越したモンタージュ手腕の見事さを実感しました。

映像がリズムを生む。そしてカット、構図、アングル、それぞれが作品全体に観客を引き込むテンポを生み出しているのです。
時にアップで、時に大胆に演技をさせるかと思えば、静かに淡々とゲームが繰り返されたり、身動きしない人物たちの合間を縫うようにすり抜ける主人公たち。背後に聞こえるささやき声、くどいほどに繰り返し映し出されるホテルの着飾られた装飾、幾何学的な庭。何もかもが一つの物語をしっかりと把握させていくべく画面に現れては消える。

物語はいわゆるラブストーリーですが、大人の物語です。だから以前にみた頃はよくわからなかったのでしょう。しかも、男が女に語りかける「去年会ったはずだ」と繰り返すせりふは実は幻想であったと思えなくもないのであるから不思議な映像である。
結局この二人は夫らしき男を後にでていってしまう。そしてFIN。

このラストだけをみれば単純なラブストーリーを複雑幻想的な映像でつづったのごとくであるが、実は途中に描かれる、夫が妻を撃ち殺す場面や手すりから男が落下したかのように思わせる場面など不可解なシーンもないわけではない。見終わってもう一度振り返ると、新たな解釈が生まれてきそうな作品であることを改めて実感しました。しかし、これは傑作ですね