くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

量産された香港ノワールの中の一本という感じのできばえ作品でした。もちろんジョニー・トー監督ならではの随所にみられる個性的な映像美の世界はこの映画の見所ですね。

物語は単純ですが、これで終わったかと思えばさらに新たな銃撃シーンが展開する。それが何度となく繰り返されるところは詰まるところストーリーをまとめていこうという脚本の練り込みをあえてしていないということでしょうか。
それぞれの銃撃シーンがジョン・ウーなどの香港ノワール出身監督らしくスローモーション、舞い上がる紙吹雪、血しぶき、などの様式化された映像をふんだんに見せてくれます。

円盤のブーメランを夜の闇にとばせてみたり、夜間の銃撃戦に雲の出入りによる月明かりを光の演出で試みたり、技巧的な場面の数々はまさにジョニー・トーならでは、というか香港ノワール作品ならではです。

道行きの場面はあたかもウエスタン調にギターの曲が使われたり、アクションの常道を過去の様々なジャンルの映画のシーンを利用して、見せ場を盛り上げる工夫は、エンターテインメントに徹底した香港映画ならではの展開。

出だし、アットホームな家庭に父親と子供二人が雨の中帰ってくる。ドアを開ける妻、次の瞬間、チャイムの音とともにドアの向こうから銃撃されてい、夫は即死。と衝撃的なファーストシーン。
続いて、かろうじて一命を取り留めた妻の父コステロジョニー・アリディ)がフランスからやってくる。ヒーロー登場という感じです。今はレストランを経営しているといいますが、かつては殺し屋であったという背景が語られます。

このコステロが三人の殺し屋を雇うあたりはどこか、「七人の侍」の侍を集めるシーンのごとくです。
ただ、このコステロという男、頭に銃弾が残っていて、記憶が突然消えるという傷を負っている。この傷が物語の単調さに深みをもたらします。

銃撃戦の後、娘の家族を殺した殺し屋三人を片づけるのですが、実はその殺し屋のボスはコステロが雇った殺し屋のボス。とまぁ、
組織のトップから追われる羽目になり、結局、コステロが雇った殺し屋も殺され、その復讐にコステロがボスを殺しにいくという展開。

二転三転で、まとまりのないストーリーですが、前述したように、アクションシーンのオリジナリティは非じぃおうに秀逸であるので、もし、脚本にもっと時間をかけて、まとまった物語を与えれば、ジョン・ウー同様、世界レベルのすばらしい映画になるかもしれません。