くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「序の舞」「沖縄やくざ戦争」

序の舞

「序の舞」
いわずとしれた上村松園の名画を題名にしたところから、彼女をモチーフにした一人の日本画家の波乱の人生を描いた作品である。
画面が特に美しい。雪の降る片田舎の出だしのシーンに始まって、京都の町屋の屋内の場面、さらに町並み、さらに長浜で人力車が橋を渡る下をむこうへ走り去るもう一台の人力車の景色が影絵のようになるシーン、また琵琶湖に日が沈む景色をバックに描かれる場面など息をのむ。

物語は主人公の母が幼い頃片田舎から京都へ養女にだされる場面から始まる。牛の背中に乗った少女は振り返ることなくつれられていく。
やがて京都で所帯を持ち、娘を授かる。そしてここからがこの物語の本編で、次女である島村津也(名取祐子)が主人公である。
少女時代から絵が好きで、やがてその才能を見いだした先生が画塾へ入るように進める。進められるままに絵の道へ進み、際のが開花、次々と展覧会で入選していく。
ひたむきに絵を描く名取祐子の演技はなかなかの危機迫るものがあり、この作品の質の高さを証明するようである。

やがて、絵の師匠松溪(佐藤慶)との肉体関係、出産、失恋と紆余曲折の人生が、しっかりとした演出で語られていく。前述したようにとにかく映像が美しく、美術監督川徳道の才能が光るシーンの連続です。
師匠と別れるも、後に再度また肉体関係となり、二人目の子供を産むが、今度は卑屈になることなく真正面から子供を育てていく決心をする津也の姿、卑屈にも逃げる松溪であるが、子供と母の絵を描いた津也の入選作品の前にたたずむ。ゆっくりと美術館のドアが閉じられて物語は終わります。

2時間を超えますが、非常に充実感のある映像で、ストリー展開もしっかりしている上に、出演者の演技も無駄がなく、いい映画だったと思います


沖縄やくざ戦争
先ほどの「序の舞」と同じく中島貞夫監督作品。
本土復帰を翌年に控えた沖縄を舞台に、地元やくざと本土からの侵略に揺れる裏社会をドキュメントタッチで描いたバイタリティあふれる映像作品である。

沖縄の夜の町が映し出され、そんな町の現状をナレーションされたところへとある居酒屋へ殴り込んでくる国頭(千葉真一)とその仲間、暴れている中へ主人公中里(松方弘樹)が刑務所を出所して帰ってくるところから映画は始まる。
この千葉真一の演技が何ともブルース・リーかぶれの大げさな演技で、みていて、鼻についてくる。

一方の松方弘樹がいかにも東映やくざで貫禄がある上に、そのほかの梅宮辰夫以下おきまりの東映やくざ俳優たちがあまりにはまっているので、よけいに千葉真一が浮いている。
カメラは大勢の人間を常にバストショットで画面いっぱいとらえ、時に手持ちカメラでリアリティある画面づくりをしています。

裏切りと殺戮の繰り返し、警察さえも頼りないままに、しかもリアリティのないストーリー展開はあまりにもその場限りのプログラムピクチャー的な作品であるが、それぞれの登場人物が、一人また一人と命を落としていくと、揺れ動く沖縄の不安定なもの悲しさがいつの間にか胸に残っているのに気がつきました。

お手軽な小品かもしれませんが、中島貞夫監督の個性がでているようで、新鮮でした