くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ローマの休日」「明治侠客伝三代目襲名」

ローマの休日

ローマの休日
いわずとしれたラブストーリーの名作。午前10時の映画祭で30数年ぶりに見直した。
やはりすばらしい。今回は全編涙が潤んでみてしまいました。1時間30分ほどの短い作品であった印象でしたが、なんと2時間近くもありました。それほど、飽きさせないストーリー展開、脚本のおもしろさ(名脚本家ダルトン・トランボ)、さらには一歩間違うとただの観光映画になるところを見事なラブストーリーに仕上げたウイリアム・ワイラー監督の力量に感服しました。

ニュースシーンから始まり、人人人と各地を歴訪するアン王女の姿が映し出され、そしてローマの地へ。様々な国賓の挨拶に答える姿から寝室の有名な場面へ。そして窓の下に見えるにぎやかな船上パーティに惹かれるように部屋を脱出。しかし、睡眠薬の影響で公園のベンチで眠ってしまったところへジョー・ブラドリーグレゴリー・ペック)との出会い。そして翌朝、会社の新聞記事で、夕べ自室に泊めた女性がアン王女と知るジョー。アンを町に送り出した後、さりげなく後をつけるジョー
一方、町にでたアンはまず髪を切る。そして花を一輪花屋のおじさんの粋な計らいでもらって、ジェラートを食べる。そこへ偶然を装ってジョーが再会。二人は観光見物を始めるが、ジョーのねらいは特ダネである。

と、ぽんぽんとシーンが浮かんでくる。それほど、展開が軽快でリズミカルなのだ。しかも、次第にアンとジョーが惹かれあう様子が、さりげなく見えてくる。クライマックスの船上パーティまでが一気に進み、そして別れ。しかしこの映画のすばらしいのはさらに続く、新聞記者との謁見のシーンである。私はこのシーンが大好きで、何度みても胸が熱くなる。

やはり、二度と作れない名作とはこの映画をいうのでしょうね。


「明治侠客伝三代目襲名」
真上からカメラはこれから御輿を担ぐために御神酒を買わしている若衆たちをとらえる。左右に御輿に乗った太鼓が配置され、左右対称の画面である。その画面を背景にタイトルバック。
タイトルが終わると一人の男の顔が画面半分にアップ、背後に祭りのにぎやかな色合いの人たちの姿があふれている。この男、吹くとのびる祭りのおもちゃを口にくわえ、次第に一人の男に近づいていく。その男とは木屋辰一家の二代目江本福一(嵐寛寿郎)、そして殺戮シーンへ。この冒頭がみごと。

物語はここから、主人公である木屋辰一家の一番子分浅次郎(鶴田浩二)を中心に、福一の息子春夫(津川雅彦)の成長する姿、浅次郎を慕う初栄(藤純子)を絡めながら、明治末期の大阪を舞台に古き侠客と新興のやくざまがいの土建業者との確執が描かれていきます。

川徳道の美術セットがすばらしく、特に田舎に帰った初栄が浅次郎と出会う川辺のシーンは遠景に橋、近景に松の木を配置し、右に土塀を残す見事なシーンを作り出しています。
また、加藤泰監督の演出の特徴なのか、地面すれすれにカメラを配置しして人々の足が乱れは知る様子を撮って躍動感あふれるショットを多用するなど、動きのあるシーンと美的な映像が交錯して見事なストーリーを紡いでいきます。

脚本が丁寧で、登場人物の存在がそれぞれにしっかりと生きているし、ほんの些細なショットが後のシーンで生きてきたりと無駄のない展開が物語に充実感を与えてくれます。

クライマックスは東映ヤクザ映画の常道である道行きのシーンで、浅次郎が殴り込むシーンに続き、その後、敵対する組の親分を追っていくと、そこに離ればなれになった初栄と再会。このさりげない再会シーンが、その前にちゃんと伏線として仙吉(藤山寛美)が浅次郎に会わせるべく尋ねる場面で今の彼女の住まいを紹介しておくなど、細部まで行き届いた展開になっているあたりがにくい。

しかし、再会するも、踏み込んだ警察に逮捕され、連れて行かれる後ろ姿で映画は終わる。心憎いエンディングである。
とはいえ、いい映画でした。