くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「昼下りの情事」

昼下りの情事

私の今まで見たうちでのラブストーリーのベストワン映画です。
久しぶりにスクリーンで見直しましたが、あらためて感動してしまいました。
今見直すと、やはりI・A・L・ダイアモンドとビリー・ワイルダーの脚本のすばらしさに感嘆します。もちろん、ビリー・ワイルダーの演出の見事さはいまさら言うまでもありません。

タイトルバックからして、やはり名作の貫禄というか、これが映画だなとわくわくさせるものがありますね。パリの町並み、さまざまなところで、さまざまな人が、さまざまな姿で恋を語っている。その様子をコミカルに映し出していく冒頭部。そして、そんな恋の町パリで探偵業を営むクロード(モーリス・シュバリエ)、さらにその娘、つまり主人公アリナーヌ(オードリーヘップバーン)さらにはゲイリー・クーパー扮するフラナガンが紹介されていきます。

I・A・L・ダイアモンドとビリー・ワイルダーの脚本のすばらしいのは無駄な人物、セリフが皆無に近いうえに、さまざまなところに細かないたずら心がちりばめられています。たとえば、アリアーヌがフラナガンの録音機に今までの男性遍歴を吹き込む場面で、1番2番と進み、14番は貿易商ということになっています。14番、このフラナガンは14号室に泊まっていますよね。貿易商ではありませんが、あたらずとも遠からずの実業家です。ほかにもありましたが、思い出せないのが残念。また、この映画も出だしで登場する浮気調査に来た男が、ちゃんとクライマックスで、この映画のエンディングのシーンに重要な役割を果たすのだから無駄がないですね。しかもこの男の出演場面の冒頭のリッツホテルのシーンもちゃんと楽団のはでな演奏で心境を演じる演出は見事。しかも、この演出は終盤でフラナガンがアリアーヌに嫉妬して心を乱すシーンで繰り返されている。

この映画、アリアーヌのピュアなラブストーリーだと思っていましたが、フラナガンというプレイボーイが一人の小娘に振り回され、次第に純粋な恋に目覚めていく男の純情の物語だったのですね。それがなんともかわいらしく、もちろんオードリーの愛くるしさも魅力的ですが、このフラナガンも憎めない。

絶妙な会話のやり取りはこの上もなく見事で、シーンからシーンへの展開もほとんど飽きさせない面白さが満載。しかもそれぞれの登場人物がなんとも憎めないし、脇役に至るまで生き生きしている。だからビリー・ワイルダーの作品は人間味あふれる映画にあんるのでしょうね。

大好きなクライマックスの汽車のシーンが近づくと、いつの間にか胸が熱くなって、ラストシーンはやはり涙でした。やはり何度見ても名作ですね