くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「地の涯に生きるもの」「トレインスポッティング」「トーク

kurawan2010-07-29

「地の涯に生きるもの」
知床を舞台にした作品で、この映画の撮影の合間にあの知床旅情を作曲したといういわくにつられ見に行きました。

映画としては凡作で正直、つまらないです。国後でうまれた主人公彦市の半生を回想形式で綴っていきますが、脚本が平凡なのか展開に抑揚がなく、それぞれのエピソードも唐突にオムニバスのように挿入されていくので作品全体にリズムが生み出されて来ない。森繁久彌の演技も今ひとつきれもなく、引き込まれて来ない。
相性のいい久松青児監督作品でしたが、げんさくのイメージを映像化仕切れなかったようです。



トレインスポッティング
素晴らしいモダンな映像感性を堪能しました。
ダニーボイル監督の卓越した映像センスはみごとですね。ハイテンポな音楽に乗せる画面リズムが秀逸で映画が始まってからエンディングまで一気に見せてくれます。

映画が始まるとテンポの良い曲に乗せて坊主の若者たちが走ってくる、あれよあれよと引き込まれていくと、ユアンマクレガー扮するレントンが車と当たって、悪態をついてタイトル。

後は次々とシュールでモダンな映像の洪水がつづきます。
便器の中に吸い込まれるレントン、強い薬でぶっ倒れたまま床に沈み込んでしまうショットなどなど、ビデオクリップのごとしです。
そして、次はどんなショットが見られるのかとわくわくしながら画面を楽しむのです。

物語は四人のジャンキー友達の自堕落な毎日なのですが、抜群の音楽センスと映像演出で全く陰湿さが覆い隠されています。
止めてはまた薬物中毒を繰り返しながら、最後の最後でまんまと大量の薬を処分した金を一人で持ち逃げするレントンの姿が爽快でさえ感じられるラストでした。
傑作ですね。


トーク・トゥ・ハー
練り上げられたストーリー構成のすばらしさに感動してしまいました。
舞台のカーテンが開くように映画が始まります。なにやら盲目の女性(ジュラルディン・チャップリン扮するカタリナ)がたくさんおかれた椅子の間を手探りで動き回り、椅子にぶつからないように男が必死で椅子をどけている。この舞台こそこれから展開する物語の縮図なのです。

そして、この舞台をこの映画の主人公二人ベニグノとマルコが偶然隣同士で見ている。
この二人がそれぞれ愛する女性が植物状態になり再び同じ病院で出会う。そしてそれぞれがそれぞれの愛情表現で女性を愛するのですが、マルコの愛する人は以前の夫とよりを戻した後で死に一方のベニグノは植物状態アリシアを妊娠させてしまって、それがばれて刑務所へ入る。

しかし妊娠したアリシアは奇跡的に目覚めるも、それを知らないベニグノは会えない寂しさだけ背負って自殺する。
その後マルコは、カタリナが振り付けした舞台を見に行った客席で偶然アリシアと出会って映画は終わります。
物語の展開の中で細かいディテールを大切にした繊細な脚本が実に素晴らしく、さりげない小道具を生き生きと利用する演出は見事というほかありません。

複雑に時間を前後させながら、それぞれの恋物語を語り、前に前に展開していくストーリーテリングが見事で全然混乱しない。やがて迎えるラストの悲劇にも、さらに続く明るい未来を予感させるエンディングで見事な感動でした。
噂通りの名作でした