くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「喜劇百点満点」「喜劇女生きてます」

喜劇百点満点

森繁久彌追悼番組二本を見る。
「喜劇百点満点」
東京の進学予備校を舞台に、そこに集まる様々な人々を笑いと人情物語で描いていく喜劇である。
森繁久彌はその学校の学長で、ちょうど受験戦争というものが話題になり、大学の予備校や浪人生が流行語のようになった時代で、そうしたはやりの世界をコミカルに、軽妙な語り口でつづっていくたわいのない映画なのですが、なぜなんだろう?この安心感、そしてこのいやされるような気持ちは。

もちろん、映画の出来映えとか芸術性とかそんなめんどくさいものは画面の中にいっさい入り込んでいない。いや、スクリーンから見えてくるのは、映画が本当に娯楽であった時代の勢い、バイタリティなのです。
俳優さんたちそれぞれ誰もが、今やテレビや映画で主役級の人たちばかり、ところ狭しと次々と登場する。もちろん芸達者とかいう面倒な言葉もそこには見られずに、単純に笑い、しんみり感動し、そしてひとときのフィクションの世界に酔うことができる。

こんないやされる世界が当時はあったのだろう。それだけでも幸せなひとときでした。
監督は松林宗恵、職人監督が山のように活躍していた時代の典型的な娯楽監督ですが、最初から最後まで全く飽きない画面づくりは今となっては実現しない世界なのかもしれません。


もう一本は「喜劇女生きてます」
森崎東監督の傑作とされている一本であるが、前述の作品同様、たわいのない喜劇であることに変わりはない。ステロタイプ化された人物たちがそれぞれの役割で仰々しいほどの大げさな役作りをするところがわざとらしいとはいえ楽しい。
それは単に稚拙とかいう言葉で表現するものではなく、これが娯楽なのだといわんばかりなのである。

舞台はとる芸能事務所、といってもストリッパーたちを世話しているアットホームな家のようなストリッパー斡旋所である。そこでは主人はお父さん、女主人はお母さんと呼ばれながら女の子たちと雇い主たちが家族のように振る舞っている。そこで繰り広げられる人情喜劇が今回の物語。

わざとらしく強面のやくざ風の着流し男やちょっと頭の弱いけれど憎めない開けっぴろげな女の子、さらにはインテリ風で話す言葉はこの時代にはやりだったであろう短大生上がりの小生意気な女の子、浪花節にでてきそうな尽くす女というキャラクターなど多彩。

そんなごったにのような世界で気丈夫な女主人(左幸子)と早朝トルコが大好きな頼りない男主人(森繁久弥)が絶妙のやりとりで物語を引っ張っていきます。

この作品も取り立てて優れた映像とか演出などは見られませんが、次々とわき起こる事件やエピソードがなんともほほえましいほどに胸に染み渡る心地よさがあります。
娯楽としての映画の本当の楽しさ、楽しみ方を教えてくれる作品でした。