くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「女王蜂の怒り」「黄線地帯イエローライン」

女王蜂の怒り

「女王蜂の怒り」
典型的なアクション映画であり、とにかくおもしろい娯楽映画である。絶妙のタイミングで繰り出されるアクションシーンが石井輝男ワールドで、とにかくそのリズム感がうまい。さらに当時のプログラムピクチャーらしく、挿入される歌のシーンもしつこくなくさりげない。この感覚はおそらく石井輝男の才能のなせる技だろうと思います。

映画が始まると神戸港祭りのダンスショーのシーン。そこへ殴り込んでくる地元のやくざの竜神組、そして、港を預かる海堂ゆり率いる海堂組とのけんかシーンの中へ。そこへいきなり宇津井建扮する風来坊ハリケーンの政が飛び込んで一気に片が付いてしまう導入部が爽快。

そして本編が始まればよくあるありきたりのやくざ同士の縄張り争いなのですが、高倉健などが演じたコテコテの展開より肩の凝らないアクションまたアクションと、次々と展開するテンポのいいストーリー展開がまさに気楽な娯楽映画という感覚で楽しませてくれるのです。

殴りあいのシーンも小気味よい石井輝男アクションが楽しめ、ジャンプカットによるダンスシーンへのつなぎやけんかシーンお合間に入る投げ飛ばすシーンのスパイス、とってつけたようにベッドシーンになるとピンクに変わる画面のこだわり、パートモノクロームで見せる夜のシーンの奇抜さなどが、飽きさせないアクションシーンを生み出していきます。

ラスト、実はハリケーンの政は実は警官だっという種明かしの何とも小憎たらしいどんでん返しも心地よい楽しめるエンターテインメントでした。


「黄線地帯(イエローライン)」
石井輝男作品の中で傑作とされる一本で、紡いでいくストーリー展開の妙味は練り込まれた伏線の積み重ねで展開する面白さが抜群の傑作でした。

映画が始まると顔の見えない一人の殺し屋衆木が仕事を請け負い、一人の男を殺すシーンから始まります。そしてタイトルバック。
しかし、この衆木はその雇い主に裏切られ、警察に追われるところから本編のサスペンスがはじまる。

何とか連絡しようと公衆電話のところへきたとき、たまたま電話をしていた踊り子エミを人質に逃避行を始め、一方、このエミは自らの機転で百円札に助けてほしい旨のメッセージを書いて靴屋で支払う。その札が巡り巡ってサスペンス色を盛り上げていくとともに、女の恋人真山がその百円札に巡り会い、次第にに近づいていく面白さも重なってくる。

衆木が自分を裏切った雇い主に近づく一方で探しているフィアンセエミに近づいていく真山、さらに警察からの追っ手の輪が次第にせばまっていく緊迫感、まるでミステリアスな幻想小説のように百円札が巡っていくおもしろさが何ともみごと。

ラストは、裏切った雇い主を殺したものの、真山や警察に包囲されて、殺し屋衆木は撃たれて死んでしまいます。

脇に登場するたばこ売りのばあさんや日本人を外国人に斡旋する売春組織の男たち、怪しいホテルの受付の女等々それぞれがどれも魅力的で物語にしっかりと存在感をアピールしていく演出は見事いうほかありません。

しかも、カメラの使い方、ワーキングの独創性もこれぞ石井輝男ワールドといわしめるほどオリジナリティとスピード感にあふれ、全く飽きさせないストーリーテリングの妙味にうならせる一本でした。