くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「セラフィーヌの庭」

セラフィーヌの庭

少し、知能が遅れているものの、純粋に自然を観察し、天使の名を受け個性的な絵を描いた画家セルフィーヌの半生を描いた作品。映画としては取り立てて優れたところもない凡作という感想ですが、フランスセザール賞7部門独占の作品ということです。ただセラフィーヌという未知の人物の姿を知るには十分な作品でした。

ロラン・ブリュネのカメラは全体の画面を抑えた色彩で描かれて、グリーンに霞をかけたような色調でシーンが展開していきます。

映画が始まると、一人のみすぼらしいお手伝いさんのような女性セルフィーヌの姿が映されます。雇われる主人たちに偉そうにこき使われながらもひたすら床を磨いたり、料理をしたり、洗濯をしたりの毎日。ちょっと彼女が知能が足りないことがこのあたりの仕草で紹介されます。
しかし、時に肉屋で血に染まった液体を瓶に詰めたり、植物をすり込んだりして、なにやら絵の具を調合している姿をかいまみせ、カメラはセルフィーヌの部屋に入っていきます。

折から、セルフィーヌの働く家に一人の間借り人ウーデがやってくる。彼こそが、ピカソやルソーなどを見いだした画商でした。ふとしたことでセルフィーヌの絵を見初め、その才能に驚喜します。

こうしてセルフィーヌが世に出ていきますが、時は第一次大戦。ここで物語は約10年あまり時間が飛びます。
そして、久しぶりにセルフィーヌと再会した画商ウーデは、さらに磨きがかかったセルフィーヌの絵に驚き、あらゆるバックアップで彼女を支援し始めますが、お金が自由になったセルフィーヌは次第に常軌を逸した浪費を始めます。そこへ世界恐慌。一気に資金が滞ったセルフィーヌはやがて次第に狂いはじめ、個展の開催にあわせてウェディングドレスをきて町を徘徊します。当然、異常を感じた近所の人に警察へ通報され、彼女は精神病院へ。

そして数年後、ウーデはかなり落ち着いたものの未だ療養所暮らしの彼女に庭に続いた広い出口のある部屋をあてがいます。かつて、毎日のようにしたように、セルフィーヌは一客のいすを持って庭にでて、大きな木の下で座り映画は終わります。

淡々と進むストーリー、次々と暗転していくシーンのつなぎなどかなり静的な画面で、正直、しんどいですね。さらに画商ウーデの半生とセルフィーヌの半生を平行して描いていくのですが、いずれにポイントが置かれるわけでもないどっちつかずが作品を散漫に仕上げてしまったようです。これを個性と呼ぶのはかまわないし、実際セザール賞を受賞してフランスでは評価されているので優れた作品でもあると思います。でも私個人としてはそれほど賞を取れるものかと思える程度の作品だったというのが印象です。ただ、こういう人物がいたということを知ることができただけでこの映画を見た甲斐があったと思います