くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ナイト&デイ」「七瀬ふたたび」

ナイト&デイ

「ナイト&デイ」
映画が始まるとノンストップアクションの連続。撃つ、逃げる、飛び跳ねる、次々と繰り返されるアクションの連続にスクリーンから目を離せない。ただ、見終わった後、その感覚しか残っていないのが今一つ残念な一本でした。

ストーリーはいわゆる巻き込まれ型のサスペンスアクション。空港で偶然ぶつかった?と思ったキャメロン・ディアス演じるジューンとトム・クルーズ演じるロイ。飛行機に乗ろうとしたジューンはなぜか便が違っているといわれる。すれ違いにトムが飛行機に。直後、ミスだと告げられてジューンも飛行機に。しかし乗ってみると満席といわれた飛行機はがらがら。化粧室にはいったジューン、外ではロイが次々と追っ手を倒していく。しかし操縦士まで撃たれて・・・と、この導入部が実にスピーディでうまい。こういう展開ではキャメロン・ディアスは実に光る。

随所に睡眠薬で眠らされながら時間を経過させていくが、最初はともかく、中盤から後半にもこの展開を利用したのはちょっと失敗かもしれない。特に後半、いわゆる永久エネルギーの電池を巡るCIAと武器商人、それぞれの裏切りのサスペンスであることが明らかになってからのアクションがかえって、間延びさせてしまうことになったようだ。

とはいっても、つぎつぎとカーチェイス、ガンアクションが繰り返される後半部も導入部同様片時も目を離せないほどにエンターテインメントの固まりである。
しかし、所々に挿入されるコミカルなショットやさりげなくロイの本当の素顔を語るショットが今一つラストに生きていないために、見終わって非常に薄っぺらいアクションという印象になってしまう。

結局、けがをしたロイをCIAは抹殺しようとし、それを察知したジューンが彼を助けて南米への逃避行へ連れ出す。今までの展開の中で演出された着替えのエピソードや両親と思われる人たちへのチケットの配達などが挿入されて走り去る車でエンディングなのだが、もう一歩脚本を練り込んでメリハリをつけ、全体に流れをつければもっと楽しくていい映画になったかもしれない。しかしおもしろかった。キャメロン・ディアスも年をとったとはいえ、この手のジャンルではさすがに生き生きしますね。

「七瀬ふたたび」
今更いうまでもなく、筒井康隆原作の超能力者たちの悲劇を描いた名作SF小説である。
しかし、ひさしぶりに、テレビのスペシャル番組以下のレベルの映画にであいました。

今回の作品、本編の前に中川翔子が演出したというプロローグがあります。あまりにもグロテスクな画面と露骨な映像に、ちょっと辟易したものの、これはプロローグだからとほとんど無視。いくら「家族八景」に続く三部作の映画化とはいえ、こんなプロローグ必要なのかと思う。要するに本編でそれぞれの登場人物に人間を描く自信がないために取り入れたのかと思ってしまった。

続く本編、人の心を読む場面でいかにも古くさいデジタル映像を多用し、サイコキネシスのシーンもあまりにもありきたり。超能力者を異分子として追う組織の不気味さも子供だましのような軍服に着込んだ集団が迫る。まるで仮面ライダーなどのヒーローものレベルである。さらに超能力者を人間として認めようとする刑事もほとんど人間味が見えない。もちろん、それぞれのエスパーたちの悲哀なんて全く描かれていない。

要するに、ラストでみんなが殺され、一人残ったタイムトラベルできる女性が過去に戻り、パラレルワールドとしてもう一度やり直すように過去の七瀬たちに告げるところで映画は終わるが、何ともそこまでのいきさつが希薄すぎて、何の感動も呼び起こさないのだ。原作のラストを改変したのはわかるが、脚本家の独りよがりで終わっている。素人映画に近いおざなりの演出、それぞれの登場人物への演技付けもまったくできておらず、見ていられい。

やはり「時をかける少女」しかり「七瀬ふたたび」しかり、NHKの少年ドラマシリーズで描かれた「タイムトラベラー」や多岐川裕美版の「七瀬ふたたび」のドラマのレベルを未だに越えることができない。いや、先頃の連仏美佐子版の方がよっぽどよかった。それぞれの原作が短編小説にも関わらず、映画という長さで描ききれないものがあるのは原作の持つ深みのあるドラマ故なのかもしれません。