くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「桜田門外ノ変」

桜田門外の変

歴史の史実を描いたドラマは時面白味に欠け、ただ重厚な作品のみに仕上がる傾向があるが、今回の作品はさすがに佐藤純彌監督、それなりの人間ドラマに仕上げていました。

映画はクライマックスの桜田門外での井伊大老襲撃の場面から始まります。現代の桜田門からカメラが引くと雪がしんしんと降りしきる雪景色の桜田門。時は少しさかのぼって、主人公の関鉄之介が謹慎を解かれ、水戸藩士が桜田門で井伊大老を襲撃する計画が次第に煮詰まるとこれへと物語が進む。そしてその指揮を任された関鉄之介の姿。さらに井伊大老襲撃の壮絶なスペクタクルシーンが映画の冒頭になる。

真っ白な雪が津々と降りしきり、その中で井伊大老のかごを囲む小姓たちは柿色の油がっぱをきている。そこへ襲いかかる水戸藩士。舞い上がる血しぶきが真っ赤に雪景色を染める。壮絶な斬り合いが延々と続き、あわやというところで、大老が惨殺され首を切り落とされる。物語は事を成就した後の水戸藩士の行く末に焦点が当てられて進んでいく。

関鉄之介らの行動を中心に、襲撃後自ら自刃したもの、まもなく取り押さえられて斬首されたもの、それぞれが廷内寝人間描写で描かれると共に、井伊大老襲撃に至るまでの歴史の流れをペリー来航にさかのぼってフラッシュバックしながら語っていく演出は下手をすると陳腐になりかねないところ、実に過不足ない長さで挿入し、物語の終盤となる関鉄之介の斬首というエンディングまで効果的な編集がなされている。

間延びしそうな物語で、途中しんどくなっても仕方のない話なのですが、特に際だった映像表現も個性的な演出もなされずに丁寧につづられる歴史の一ページの人間ドラマはそれなりに見応えがありました。さすがに佐藤純彌監督、それなりの作品に仕上げる手腕は見事なものでした。