くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「雷桜」

雷桜

年末大型時代劇のごとき作品、といえばちょっと言い過ぎかもしれないが、どうも今一つ映画としてのリズムが沸いてこない作品でした。

廣木隆一監督の演出は非常に長回しを多用し、演技者にしっかりとそのシーンの機微を伝えてくることが特徴だといえますが、岡田将生蒼井優も今一つその迫力を伝え切れていません。もちろん、物語が時代劇なので、それなりの堅苦しさの中に、ファンタジックなラブストーリーを現代的に盛り込みたいのでしょうが、その微妙なニュアンスが伝わってこない。

それぞれのキャストが演技力がないとかそういうのでもなく、生かすだけの演出がなされていないわけでもなく、引き込んでくれるだけの展開を生み出す脚本ができあがっていないわけでもない。ただ、それぞれがちぐはぐなのである。かみ合っていないために、お互いに打ち消してしまってラストシーンの感動が盛り上がりきれずにエンドタイトルになる。

幼い頃に、気の触れた母に育てられ、そのトラウマから感情が高ぶると気を失ってしまう主人公斉道(岡田将生)、そんな彼の静養のために、そばに仕えていた瀬戸(小出恵介)のふるさとへしばらく逗留することになる。そこには天狗と呼ばれ村人からおそれられているが実は小出恵介の妹である雷(蒼井優)が山に暮らしている。

瀬田の里に到着した斉道はそこで雷にで合い、お互い好かれあって、恋に落ちる。しかし、斉道は将軍家の子供であるため、紀州藩主として去らねばならぬ運命が近づく。一方、この斉道を暗殺せんとする集団が登場するが、これが今一つ何のことかわからない上に、緊迫感を呼び起こす起爆材にも成らない。

クライマックスの村祭りのシーンの迫力にも欠ける上に、二人で逃げると決めた斉道と雷が一夜をともにすごし、翌朝、暗殺集団にねらわれる下りも中途半端な時代劇に終始する。

結局、かなわぬ恋は二人を引き裂き、斉道は紀州へ旅立つ。
そして18年後、病のために死の床にある斉道の姿、そばにいる瀬戸、斉道の死を看取って、故郷に帰ってくる。雷の住まいを訪ねるとそこには18年前のちぎりで生まれた雷の息子(岡田将生二役)が迎える。ここでえも言われる感動を呼ぶように演出されているのだが、何とも盛り上がらないし弱い。残念な一本でした。