くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「月夜の宝石」「紅いコーリャン」

月夜の宝石

「月夜の宝石」
先日までみていたフランスコメディの中のブリジッド・バルドーとはうって変わってのシリアスな顔つきのバルドーが見物のサスペンス映画。監督はロジェ・バディムです。とはいえ、おきまりのようにブリジッド・バルドーのセクシーなショットも満載で、チラチラと見える太股や、大胆なシーンで見える乳房のふくよかさ、半ば透けたようなネグリジェ姿で走り回ったり、全裸シーンなど、やはり彼女の魅力はそのキュートで、セクシーな肢体にあるようですね。

シネスコの横長の画面を効果的に使い、奥深い画面づくりで、左右のスペインの城壁の町並みの通りをまっすぐに彼方までとらえた映像はなかなか美しい。また、恋したランベルトとウルシュラの二人が逃げた風車小屋のショットは、アップのシーンでセット撮影を挿入したりとなかなかの懲りようです。

映画が始まると真横に広がる景色のショット、メインタイトルの後その景色が右下に小さくなって左にブラックバックでタイトルが流れます。
タイトルが終わると、遠くを汽車が走っている。その汽車はやがて駅に着くと姪のウルシュラ(ブリジッド・バルドー)が降りてきて、叔父の運転手が運転する真っ赤なオープンカーに乗る。途中の町で一人の娘が井戸に身を投げて自殺した場面に出会う。どうやらこの娘の死は土地の伯爵である叔父の仕業であるらしく、兄のランベルトがウルシュラの乗った車にしがみついてくる。

人目でランベルトに恋してしまったウルシュラであるが、実はランベルトは叔母の愛人である。
ふとした弾みで叔父を殺してしまったランベルト、逃げる彼をウルシュラは助け、二人の逃避行が。これがこの映画のメインストーリーである。

時にセクシーに時に小悪魔よろしくウルシュラはランベルトと接するが、所詮、警察から逃れるわけでもなく、二人は叔母と連絡を取って町に戻ってくる。しかし、たまたま見つけた警官の発砲にランベルトをかばったウルシュラはその場で撃たれ死んでしまいエンディングである。

シリアスな物語であるが、どこかしこに荒い展開もみられるのはこの時代の映画にはよくあることである。ロジェ・バディムの演出のさえは先日みた「素直な悪女」ほどではないが、これはこれでブリジッド・バルドーの別の面からの魅力を楽しめる映画だったと思います。

真っ白とイエローオーカ色の町並みの中で走る真っ赤なオープンのサンダーバードが何とも印象的で、祭りの闘牛場で観客の中に真っ赤な服装の人々を配したりという赤にこだわった映像はバディムならではでしょうか


紅いコーリャン
画面の中で展開するダイナミックな映像に圧倒されてしまう見事な傑作でした。チャン・イーモウ監督のデビュー作であり、名コンビコン・リーの初出演作でもある。
真っ赤な色彩を象徴的に使い、風にざわめくコーリャン畑を迫力ある映像で見せつけてくる映像美はまさに巨匠のデビュー作らしいぎらぎらした迫力を感じます。

効果的に挿入される男臭い歌声、スローモーションとクローズアップで見せるコーリャンが風になびく様子。真っ赤に燃えるようなコーリャン酒の毒々しさ、主人公のコン・リーがまとう目の覚めるばかりの真っ赤な衣装。冒頭シーンの布でできた輿入れの真っ赤なかご、クライマックスからラストシーンに見せる燃えるような真っ赤な太陽、それに映えて朱に染まったコーリャン畑。日食でかげる太陽の迫力。これこそが映像美の世界である。

これは私の祖母と祖父の物語です。というナレーション。主人公九児(コン・リー)のアップで映画が始まります。
1920年、まだハンセン病への正しい知識のなかった時代、ハンセン病の男の元に嫁ぐことになった主人公九児、真っ赤な服をまとい、真っ赤な布製の御輿の乗り、丸坊主の男たちが担いでいく。ゆっさゆっさと揺れる御輿の動きと、動きに合わせるように歌う男たちの声、隙間からのぞき見る九児の姿。

やがて御輿は野生のコーリャン畑の中へ。そこで強盗らしき覆面の男に襲われるが、すんでの所で男たちに助けられる。その時、その中の一人余占鰲に目を合わせ、お互いに惹かれる。
結婚後三日目に里に帰るという慣習通り、里帰りする九児をコーリャン畑でさらい、畑の中で愛をはぐくんだのはこの余占鰲でした。

スローモーションの風に揺れるコーリャンの景色、その隙間の中で繰り広げられる出来事の数々、真っ赤な九児の衣装が緑の植物の中で浮き立つ映像はどきどきするくらいまぶしくみえます。
その後、病気の夫は死に、一人になった九児だが、使用人をそのまま使いコーリャン酒を作る仕事を引き継ぐことになります。そして、余占鰲と一緒に暮らすようになり、やがて子供ができて物語は9年後へ。

今や、酒造りも軌道に乗ってきたところへ日本軍がやってくる。非道の限りを尽くす彼らに九児は使用人たちと日本軍のトラック爆破を計画。道に酒を埋めて爆薬を仕掛けて待つ男たち。しかし、なかなか目当てのトラックが現れず、お腹もすいてきた男たちに九児たちが弁当を持ってやってくる。九児の笑顔、子供の叫ぶ声、トラックの音、男たちが目覚めあわてる様子。一瞬で日本軍の機関銃が撃たれ、九児はその場に倒れる。叫ぶ子供、男たちは手に手に酒瓶をもってトラックに投げつける。

爆発炎上と共に、男たちも倒れ、残る余占鰲と息子。空は真っ赤に染まり、やがて日食、そしてふたたび太陽が顔を出すと辺り一面真っ赤な景色が広がっている。そしてエンディング。素晴らしいラストシーンでした。
このラストシーンのみでなく、夜の景色で月が空にあがり、地面が青く染まるショットなど、大自然の景色のとらえ方も抜群に美しくダイナミックである。
まさに、男臭い迫力に満ちた映像であり、ぐいぐいと迫ってくるストーリー展開のダイナミズムを堪能できる一本でした。