くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「裸の大将」

裸の大将

作品としてはハイレベルではないが、セットの美しさ、小林桂樹の軽妙な演技のおかしさにひかれる一品でした。

時代背景を第二次大戦末期から終戦直後をにし、ラストシーンで自衛隊の行進に執拗に食い下がる山下清の姿を描くのは明らかに反戦を唄ったものであるように思います。製作年度は1958年、高度経済成長まっただ中、そして、これからその頂点へ向かおうとしていた時代ですから、一昔前の戦禍を思い起こすテーマが盛り込まれても不思議はないと思います。

もちろん、これは推測であり、果たして当時リアルタイムでごらんになった人たちがそう思ったかはわかりません。しかし、戦時中の食糧不足を何度も山下清の演技の中に盛り込んだことなどを見れば、そういう意図があったと思っても仕方ないと思います。

監督は堀川弘道。先日見た「白と黒」などの傑作も生み出せるいわば職人監督であり、そつなく天才画家山下清の半生を描いたといえるでしょう。日本の風景を美しくとらえた画面づくりはなかなか見応え十分、名カメラマン中井朝一を迎えた演出も見所だったのですが、いかんせん退色が激しくて赤くなってしまっているのが何とも残念でした。

ラストシーン、戦争復興もめどが立ち始めた街で、自衛隊を歓迎する人々を後目に海岸をかけていく山下清の姿にはどこか寂しげな雰囲気が読みとれたのはわたしの考え過ぎなのでしょうか?