くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「モンガに散る」

モンガに散る

映画友達の田中さんに絶賛で勧められ見に行きました。
バイタリティあふれる圧倒的な画面づくりと、華麗なほどに繊細な美的センスでサイケデリックに彩られた映像表現はモンガという台湾の一都市での武力抗争の中で青春を謳歌する青年たちの物語にも関わらず、何ともいえないもの悲しさと切なさを醸し出してくれます。

主人公はそんなモンガの町に引っ越してきた一人の高校生モスキート。転校初日から歓迎会のごとく地元の高校生にいじめられるのであるが、持ち前の敏捷さと頭の回転で煙に巻くように交わしていく。そんな彼を見ていた地元の親分の一人息子ドラゴンとその親友モンクが率いる不良グループはモスキートを自分たちの五人目の仲間に引き入れることを決意する。

こうして、五人の不良仲間は喧嘩はするけれどもお互いに義理で結びついた義兄弟として絆を固め、日々の青春を謳歌し始める。

そんな毎日がスローモーションを多用した喧嘩シーンや、縦横無尽に移動するカメラワーク、コミカルなワンショットを挿入で迫力満点に映し出されていきます。しかも、デジタル処理による赤や黄色のイメージが画面の隅々を流れたりと美しい上に、古き町並みを残す狭苦しいモンガの夜のネオンが何とも美しくて、彼らの生き方そのものの若さを増長させるような効果を生みだしています。

しかし、そんな古風な世界に大陸から新たな極道の勢力が忍び寄ってきて物語は大きく転換していきます。

ドラゴンの父ゲタの親分、モンクの父など昔気質の親分秀は新しい形のただもうけ主義だけの極道たちと手を組むことは断じて拒む。しかし、そんな新勢力に荷担した親分の息子は巧みにモンクに言い寄りモンガの将来の為にゲタの親分などを射殺していきます。

その真実をやがてモスキートたちも知ることになり、五人の絆は一気に崩れる一方で、これまでの友情との葛藤に悩み始めます。しかし、父のように慕っていたゲタの親分を殺されたことはモスキートは許せず、やがてモンクの命をねらい始める。

昔ながらのネオンに彩られる狭い町並みの中で追いつめたモスキートはモンクに切りつけ、モンクはピストルでモスキートを撃つ。そんなモンクを親友のドラゴンが切りつける。飛び散った血しぶきがモスキートの頭上で桜の花びらのように変化します。

時代の流れのなかで崩れていく若き日の絆が余りにももの悲しく、隣の女性は涙を流していました。
スローモーションやデジタル処理を多用した今風の演出は若干薄っぺらい感じを与えないわけでもないと想います。これだけの演出ができるならもっとフィルムにこだわってもよかったのではないかとも思えますが、これが個性なのかもしれません。