くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「大阪の女」「王将」

大阪の女

「大阪の女」
大阪天王寺の芸人村を舞台につづられる人情ドラマである。
映画が始まると長屋のようなせせこましい二階建ての部屋を外から順番にとらえていくショットから始まる。それぞれの部屋にそれぞれの芸人たちがその日暮らしをしながらお互いに寄り添うように助け合って生きている姿をまず見せてくれます。

物語はどれが中心ということもないのですが、一人の漫才役者の娘が結婚をする事で起こるどたばたドラマが描かれていきます。そこにあるのは一見きたないようですが、行き着くところお金の話になるという何とももの悲しいながらもほほえましいストーリーなのです。

ほんのわずかのお金やほんのささいなことで少しでも自分にお金を取り込もうとする底辺の人々の様子はまさに取り留めのないもがくような物語です。

特に抑揚もない上に、これといった出来映えの作品ではないので正直退屈なところもありますが、昔懐かしい松竹の芸人さんたちが次々と舞台に立つクライマックスはまさに芸能史の記録ドラマの如しであり、それだけでもこの映画を見た値打ちがあるというものでした。


「王将」
もう一本は二度目になるスクリーン上映。大好きな映画「王将」です。
やはり何度見ても好きな映画というのは泣けてくるもので、同じ場所で胸が熱くなり同じ場所で涙がこぼれてきました。

見直してみて再確認できたのは伊藤大輔監督の豪快な演出が生き生きと一人の男のドラマを描ききっているということです。始めてみたときはラストシーンがちょっとぶっきらぼうに思えましたが、題目を唱えるエピソードはちゃんと前半部分に小春が題目を唱えるシーンを繰り返していることがわかりました。

さらに、大きくカメラを動かして大胆にアングルを変えていく演出は坂田三吉の豪快な人柄と慎ましいほどの人なつっこさを演出していく。娯楽色と人情ドラマを織り交ぜ、観客の希望を叶えていくようにクライマックスを迎える。
まさに、映画黄金期の職人芸といえると思います。しかも、作品として非常に高レベルで完成されている。これこそ古きよき名作の一本ではないかと思います。