くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「戦場に架ける橋」

戦場に架ける橋

なんばTOHOで見逃した「戦場に架ける橋」を梅田TOHOで見に行きました。本来、「ゴダールソーシャリズム」を見に行く予定が、時間が変わっていたために見ることができず急遽こちらを見に行ったのです。

やはりすばらしい。名作と凡作はどこが違うのかをまざまざと見せつけられる思いがしました。
こうして何十年ぶりかでスクリーンで見直してみると「アラビアのロレンス」に比べて娯楽性というかエンターテインメント的な要素が格段に多い作品であることを実感します。

映画が始まると鷹が空を舞っている。そしてカメラはジャングルの中へ、そして線路が映されイギリス人捕虜が乗っている。
そして本編が始まるとイギリス将校の隊長であるアレック・ギネスと早川雪州とのやりとり、そして橋を造り始めるまでの展開。一方でウィリアム・ホールデン扮する将校が脱走する。

中盤になると、橋を造るというアレック・ギネスと早川雪州とのやりとりの場面、一方でウィリアム・ホールデンを中心とする爆破するために再度乗り込んでくる兵たちのショット。この二つが交互に抜群のタイミングで挿入されてきます。

橋を架けるシーンがちょっと緩慢になると爆破チームのショットが見事に挿入されて、決して画面から観客の目を離さない。

そして、この二つのプロットが次第に一つになってくる。そして爆破シーンという壮大なクライマックスへと向かう当たりの構成のうまさは絶品である。
さらに、爆破シーンにおいても、道案内でついてきた現地の女性の姿をワンショットで挿入し、あたかも軍人たちのバカさ加減を非難するような視線をアップで見せる。

そして、アレック・ギネスも早川雪州も死に、ウィリアム・ホールデンも死んで、なにもかもが無担ってしまうエンディング。軍医が「狂っている」というセリフを何度も繰り返しながらカメラは大きく空まで引いていって、川の全景をとらえる。冒頭と同じく一羽の鷹が空を舞っている。

結局、アレック・ギネス扮するイギリス将校も日本人にたてつきながら、果たしてこの行為が正しいのかは見ている私たちにもわからない。一見、イギリス人が日本人を凌駕したかのように見えるが、実はこのイギリス人の行動は敵に利を与えているのであるから、お国のために正しいことをしているのか、ただの意地ではないかとさえ見えてくる。

ラストのせりふで「狂っている」と繰り返されるのはまさにそこにあるのではないでしょうか。
なにが正しくてなにが間違っているのかは戦争というばかげた行動の中では全く意味をなさない。これほどの超大作の娯楽映画にあってここまでのテーマを盛り込んでいるのは驚愕に値するといえますね。まさにこれが名作です。