くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「暗殺の森」「ロベレ将軍」

暗殺の森

暗殺の森
何十年ぶりかでスクリーンでみました。
やはり、この映画は映像芸術の固まりと呼べるにふさわしい傑作ですね。
映画が始まって点滅するネオンの光に映し出される主人公の姿から始まって、次々と展開する映像はまさにベルナルド・ベルトルッチ監督の非凡な感性のなせる技で、その一つ一つが想像もつかない画面を映し出してきます。

時に、真正面から平坦にとらえるかと思えば、驚くような極端な斜めの構図になる。さらに人物がこちらに歩いてくるシーンに続いて別のシーンでそのままこちらに歩いてくるカット、そのほか書き上げたらキリがないほどの多様多彩な映像が繰り広げられる。

そしてもちろん、冒頭のシーンに絡めて描かれる過去のフラッシュバックのストーリー。そしてそれが次第に現代と人いつになっていく巧妙なテクニックにはもう脱帽以外の何者でもないし、凡人たるわれわれのは決して白紙から生み出せない天才的な創造力があふれています。

そして、そんなベルトルッチの天才的な演出をさらにそう服するかのようなヴィットリオ・ストラーロのうっとりするような美しいカメラ。まさに総合芸術としての映画の一つの完成した形がこの作品にはあるともいます。

何度みても飽きさせない作品の魅力こそがこの映画の最大のおもしろさであり、それがこの作品における娯楽性なのだと思います。堪能しますね。


ロベレ将軍
もう一本は、ベネチア映画祭でグランプリを取りながらも公開当時過小評価されていたというロベルト・ロッセリーニ監督の名作。
第二次大戦下のイタリアを舞台に、博打と詐欺行為を繰り返してきた姑息な一人の男が、ドイツ将校の画策によってパルチザンの首謀者を見つけだすため、英雄ロベレ将軍となって牢獄へ送り込まれる。
ところが、とらわれの男たちの姿、ドイツ人の横暴を見るうちに愛国心に目覚め、自らロベレ将軍として処刑されていきます。

ロッセリーニらしい重厚な画面作りと物語展開の妙味は非常に充実感のある作品として凝縮された完成度を見せてくれます。
奥行きのある構図で刑務所の内部をとらえるカメラと、一方で狭い一室で過ごす主人公の対比が効果的にテーマの重々しさを演出しているし、なんと言っても主演を演じたヴィットリオ・デ・シーカの名演技がこの作品を一級品に押し上げていることも忘れてはいけないと思います。

スタンダードの画面の中に人の密集したショットと、開放感のあるショットを巧みに組み合わせた画面作りのおもしろさ。そして、しがない一人の男が英雄として祭り上げられ、さらに愛国心に目覚めるまでの心の変化の描写など、ロッセリーニ晩年の作品とはいえ、最後まで追い続けたロベルト・ロッセリーニらしいテーマが全く色あせずに表現されていた秀作であったと思います