くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「お家をさがそう」「ランナウェイズ」

お家をさがそう

「お家をさがそう」
名匠サム・メンデス監督が描くちょっとコミカルでちょっと暖かいファミリーのロードムービー。不思議と引き込まれて、笑いの中に潜む不思議な感覚が次第に本当の家族って何だろうと問いかけてきます。

主人公の二人は婚姻届けを出していないけれど熱愛するバートとヴェローナカップル。物語はこのカップルの彼女が妊娠するところから始まります。セックスの最中にバートがヴェローナのアソコの異変に気がつき妊娠が発覚するという笑えるファーストシーンで一気に引き込んでくれます。

6ヶ月になってヴェローナのおなかも大きくなった頃、バートの実家へ報告に行くと、両親は近々引っ越しをするという。両親が住んでいるから今のところへ越してきた二人なのに、それでは意味がないと、産まれてくる子供との家族にベストの土地へ引っ越すことを決意。

それぞれの知り合いを訪ねて、最良の引っ越し先をさがす旅にでるというのが本編。
ところが、バートのいとこやら、大学の同窓生やら、ヴェローナの妹やらが暮らす先々へ訪問するも、それぞれがなんともちぐはぐでうまく行っていない家族ばかりで、自分たちの理想とするところが見つからない。

結局、22歳の時に死んだヴェローナの両親の実家の家にやってきて、そこがベストであることに気がつく。最高の家族は身近にいたという、まるで「青い鳥」の如しの物語なのです。

なんといっても、行く先々で出会う家族の個性的なこと。やたら下品で陽気な家族、妙に東洋的な思想で暮らしながら、子供の気持ちも考えない家族、たくさんの養子をもらって楽しい毎日なのになぜか自分たちの子供ができない夫婦、などなど、センスのいい楽曲を織り交ぜながら、真正面の構図などを多用した静かなシーンの中に、どことなく笑えるコミカルな展開で見せる家族のあり方の物語が沿ってもみている私たちの心に暖かいものを伝えてくれます。

行く先々の夫婦は婚姻届も出してふつうの夫婦になっているのに、主人公たちに唯一欠けているのが婚姻届けという皮肉もまた物語に深みが出てよかったかもしれません。
ハートフルないい映画でした。


「ランナウェイズ」
セクシーな出で立ちで一世を風靡したガールズバンド”ランナウェイズ”のその結成から解散までを描いたいわば音楽バンド映画である。

主演のダコタ・ファニングは子役を離れ始めてからちょっと注目している女優さんでもあるので彼女目当てもあって見に行きました。

作品としてはこれといって取り立てるほどの映画ではなく、ただ、”ランナウェイズ”の軌跡をたどるだけの凡作だったというイメージです。

全体にだれるほどでもないし、飽きさせない展開はそれなりに見応えあったと思えなくもないのですが、登場人物への焦点がぼやけているのか、中心となる核のキャラクターが際だっていないのです。たぶん、リーダーをやったジョーン(クリスティン・スチュワート)とボーカルのショーン(ダコタ・ファニング)の人物に物語の焦点がおかれているのだと思いますが、ラストで二人がラジオ番組の電話だけで会話するというエンディングとそれに続く各メンバーのその後を語るエピローグへ持って行って訴えかけるには途中が弱い。

映画が始まると、いきなりショーンが初潮を迎えるショットからはいる。このショッキングなカットで一気に映画に引き込まんとするが、何ともその後はこれといった独創的な映像演出がみられず、淡々と”ランナウェイズ”が結成され、ヒット曲「チェリーボム」が作曲され、海外ツアーで日本にやってきて、やがてそれぞれのメンバーが疲れきって分裂していく姿が語られていく。

舞台シーンもそれほど迫力のある演出がされていないのがで、せっかくのダコタ・ファニングの熱唱が生きてこない。もう一人の主人公ジョーンの苦悩も今一つ伝わりきらない。

15歳前後というあまりにも若すぎる芸能界デビュー、しかも現実を罵倒していくのが売りのロックミュージックの世界で、訳も分からずいわれるままに絶叫し、そして人気の頂点になったメンバーたちの悲哀。この作品のテーマはそこにあるのではないかと思われるのに、その深淵に映像が届いていないという感じでした。

全く、つまらないわけではなかったけれど、脚本の練り込みが今一つ足りなかったという感じで、まぁ、ふつうの映画だったかなという感想ですね。