くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ディーバ」

ディーバ

ジャン・ジャック・ベネックスのデビュー作です。
本当にすばらしい作品でした。画面に配置する色使いといい、流麗なカメラワークといい、まさに品のよい芸術的な一品。それでいて、しっかりとユーモアのセンスも持ち合わせ、さらにドキドキさせる娯楽性も兼ね備えている。これぞ名作と呼べる一本でした。

映画が始まると主人公ジュールがあこがれのオペラ歌手シンシアの舞台を見るべくバイクを走らせている。ま黄色なバイクに真っ赤なジャケットが実に美しく、フランス映画特有のブルーを交えた三色の画面づくりがさりげなく組み合わされた映像が展開する。

シンシアの歌声は抜群の声量で迫ってきて、映画の導入部として見事なインパクトを呼び起こします。このシンシアの楽屋でジュールはその衣装を盗むところから物語は少しずつ本編へ。

衣装が盗まれたという街頭の記事、走るバイク、そこへ一人の裸足の女性ディアが二人の男に追われている。男とすれ違うジュール、警察手帳、そしてナディアは殺され、死の直前にジュールのバイクのポケットにカセットテープが隠される。

一方のジュール、レコード店で万引きをするベトナム人の少女アルバを目撃、彼女と親しくなり、彼女が同棲するゴロディッシュとう男の部屋へ出入りするようになる。

ジュールのバイクの鞄に放り込まれたカセットテープには麻薬組織と人身売買の黒幕を暴露する音声が入っている。警察、組織、がそれを追う。
一方レコーディングをしないシンシアの歌声の海賊版の噂。そのテープを持つジュール、三つどもえ四つどもえに物語が絡みはじめ、流れるようなカメラワークと趣味のよい色彩演出、画面の構図でどんどんストーリーが進んでいく。

クライマックスで、カセットテープを組織の人間と取引をするゴロディッシュの真っ白なクラシックカー、バックミラーに映る景色、下水からの風に舞う「七年目の浮気」を思わせるスカートめくり上がるシーン、盲目と思っていたオルガン挽きが目の前に落ちてきた札束に思わず声を出すユーモアなの絶品の映像づくりが迫ってくる。

ユーモアと緊張感でクライマックスの取引のシーンへなだれ込んだ後は、一方でジュールが、密かに録音したシンシアの歌声の入ったテープをシンシアに返すべくシンシアの元へ急いでいる。無事に取引を終えてまんまと兼も手に入れたゴロディッシュはアルバにジュールがシンシアの元に言ったことを聞きあわてて後を追おう。

一方組織の二人がジュールを追いかけ、とうとう追いつめる。しかし、ジュールの元の部屋で張り込んでいた刑事の一人に助けられるが、ピンチになり、あわやというところで駆けつけたゴロディッシュに助けられる。
ジュールはようやくシンシアの元にテープを届け、誰も異なオペラ座で歌う彼女を見下ろすカットからジュールが彼女に寄り添い、ゆっくりとカメラは曳いていって二人が抱き合うシーンでエンディング。

まさしく、ジャン・ジャック・ベネックスの才能を彷彿とさせる傑作であり、どこをとってもオリジナリティと繊細かつ鋭い映像感性がみなぎった絶品の一本でした。良い映画を見ました