くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「生き残るための3つの取引」「ブルーバレンタイン」

生き残るための3つの取引

「生き残るための3つの取引」
細かいカットとハイテンポな編集、小刻みな画面展開で一気に物語りに放り込んでくれる導入部は実に見事で、これはと思わせる予感が走る。

そして本編にはいると、主要人物が誰なのかあっちをいじり、こっちをいじりという展開で非常に散漫なストーリー展開が次々と起こっていく。物語は非常におもしろいように思えるのですが、どういうわけか、??とあちこちに飛ぶ話がなかなかまとまってこなくて見えてこない。その上、韓国の人名がチェとかチョンとかチュとかいわれると誰が誰か最初は追いかけるのに必死になってしまった。とはいっても、顔つきが全然違うキャストを配置していたのでそのうちに何となく把握できてきたのはありがたかった。

冒頭、少女殺害事件の犯人らしき人物を追ってきた刑事が誤ってその男を射殺してしまう。真犯人であるかどうかの立証も待たずに射殺してしまったために、警察は事件解決した旨の発表ができずいまだ真犯人を検挙できないということになる。しかも、誤って射殺したとなると警察の面目丸つぶれにある。そんな警察に世論や大統領までもが意見してくる。困った警察は真犯人をねつ造することを思いつく。

そこで、警察官で敏腕のチェ捜査官にその仕事を頼み、そのかわり昇進を約束する上官。チェは裏社会のボス、チャンにそのねつ造犯人のめぼしき人物を見つけさせる。一方チェの動きに不振を持つ若きチュ検事が様々な方向から真相へ迫ってくる。この三人の物語が中心なのだが、時にあちこちに焦点が移る上に、敏腕とされるチュもやたら切れまくるし軽薄な人物描写であり、裏社会のボスというチャンもどこか貫禄がない顔立ち、さらにチェは口数が少なく敏腕であるかのように見せようとするも人物の描写が物足りないために迫力がない。全体に演出が何ともどっちつかずでまとまらないのである。
ただ、時折、恐ろしくシャープで切れのいい演出が見られるのが実に不思議な監督でもあります。

韓国映画特有のオーバーワークな演技が鼻についていたことも確かかもしれませんが、今一つはいりこんでいけないうちにどんどん物語が進んでいった。
しかしながら、一見混乱していた人物関係も次第に整理されてきて、クライマックスへ向かうにつれてストーリーのおもしろさをわずかに味わうことができました。

結局、真犯人はねつ造した男だったという落ちがなんとも皮肉な結末で、何のために危険を冒したのかむなしくなるエンディングはよかったと思います。
でも、このどこかすっきりとしない見終わった後の感想はなんなのだろう。果たして拍手するほどにおもしろかったのかそれともどこか隙だらけのもう一歩足りない映画だったのか、微妙なできばえの作品でした。

ブルーバレンタイン
シンディとディーンという夫婦の物語。出会った頃の愛し合っていた時代と、どこか夫婦に溝ができてぎくしゃくしている現代の二人を交互に描きながら、男と女の愛のあり方、夫婦の誓いの意味、愛情の終演をつづっていく。

手持ちカメラを多用し、二人の姿を第三者的な画面でドキュメント風に追いかける演出が非常に個性的ではあるが、素直に展開を見てみれば非常に平凡な物語なのである。ただ、交互に交錯させる二つの物語が同じ人物ながら一方は愛し合っていて、一方はいがみ合っているという対比で描いていく斬新さが話題を呼んだのかもしれない。

二人の間にあるフランキーという愛くるしい少女が二人を結びつけるのかと思いきや結局、ラストではディーンはシンディの元を去っていく。

映画が始まるとフランキーが愛犬メーブルを呼んでいるシーンに始まる。とても暖かい家族であるかのような導入部が、次第に過去と現在を交互に描くうちに、現実の二人の姿が次第に見えてくるというストーリー構成である。
冷めた視点を終始この夫婦に注ぐ監督の目はいったいなにを訴えたいのか。結婚の時の永遠の誓いはいったい何の意味があったのか、子供の存在さえも絆にならないのか、そんなテーマが見え隠れするかのような作品でした。

鋭いドキュメント風の視点で愛の物語を描くのはわかりますが、どこか監督自身の愛に対する不信をしつこく訴えかけてくるようで、正直あまり好感の持てない作品でした