くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「悲しみのミルク」

悲しみのミルク

南米の映画なので、まず国の背景、歴史などがある程度頭にはいるまでがちょっと戸惑ってしまう。しかし、そのあたりの知識はあるに越したことはないとはいえ、すぐに物語に入り込んでいくことができた。
とにかく、なんともいえない切ないドラマでした。わかったようでもあり、わからなかったようでもある。ファウスタという一人の女性の物語である。

映画が始まると老婆がベッドに横になり歌っている。その歌詞が非常に過激で「テロリストたちにレイプされ、さらに殺された夫のいちもつを口に含まされ、陵辱され、殺してくれと懇願する・・」というような内容。それが流行歌のレベルかと思っていたが、最後まで見ると、どうやら人々は即興で心におもうままを歌にする習慣があるようで、この老婆の歌も経験によるものなのだろうと理解できる。

そして、この老婆は息を引き取る。となりにおそらくこの老婆の娘であろうファウスタがいる。外では叔父さん娘が結婚の準備をしている。そこへふらふらとでてくるファウスタ。そして、その場で鼻血をだして倒れてしまう。この地方の古い考え方で恐乳病という病で、母親の恐怖が母乳を通じて娘に移ったためらしい。

母親の葬式のための金がないファウスタはある裕福なピアニストの家にメイドにいく。そこでの彼女の心の動きを描くのが物語の本編である。しかも、彼女の膣内にはジャガイモが挿入されているという医師の説明などもある。母親のようにレイプされないための防衛手段というなんとも言葉にできない対処法に息をのむ。

そのためかこの娘はことあるごとに体調を崩す。周りでは幸せそうな結婚シーンが繰り返し描写され、ほとんど言葉を発しないまでも、結婚にあこがれる、美しくなることへの羨望があることをわずかずつ彼女の行動の中に表現されていく。

メイド先の女主人が彼女の歌を気に入り、一曲歌えば真珠の首飾りの真珠を一つずつあげるといわれ必死になって歌を歌うファウスタ。しかしその女主人はピアノの奏者で次の作品発表のため、彼女の即興の歌を聴きたいだけであることが最後で明らかになる。

結局首になったファウスタはもらうはずだった真珠を盗み、その後体調を崩して、助けてくれた男に、自分の体からジャガイモを取り出してほしいと涙して気絶する。
退院した彼女は首にネックレスをし、ジャガイモの花にそっと口づけ、男を迎え入れるシーンで映画は終わる。

抑圧されていたファウスタが解放される瞬間である。

いい映画だったと思うがいかにも国柄が全面にでた悲しい物語でありました。第三国の映画が評価されるのはこういうテーマになると言うのも悲しいですね