くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スコット・ピルグリムvs邪悪な元カレ軍団」

スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カ

スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団
ノリでどんどん展開するボケとツッコミ満載の機関銃ムービー。そんな言葉がぴったりのお気楽なお遊び映画でした。とにかく、出だしのユニバーサルのロゴがでてからすでにテレビゲームの世界へ引き込んでいきます。そして、次々と細かいカットであれよあれよと次々と物語が前に進んでいく。コミック漫画よろしく画面に所狭しと現れる効果音や叫び声のロゴ、一つのエピソードが語られるかと思うと肩すかし、さらにシリアスになろうとするとボケる。まさに全編摩訶不思議なおふざけ映画です。

物語の原作はアメリカのコミックですが、日本のゲームなどに影響を受けたというだけあって、完全なゲームワールド。
主人公スコット・ピルグリムが冒頭に登場し、今、未成年の中国系女子高生ナイブスと交際していると告白するところから映画が始まる。ところが、一人のピンクの髪をしたラモーナと出会って一目惚れ、二股をかけて猛烈アタックを始める。ところがこのラモーナには一癖も二癖もある元カレが7人。次々とバトルゲームよろしくスコットに挑戦してくる。そのバカバカしいほどのバトル戦をテレビゲーム的にCGとおふざけ満載に描いていきます。そこへさらにスコットの元カノやスコットとルームシェアをする友だちや同じロックグループのメンバーも絡んできて、もうなんでもありの物語が繰り広げられるのです。

完全に吹っ飛んだような映像表現は今時の日本の監督には作れない独特のリズム感と映像感性を生み出して、めまぐるしいほどに次々と進むストーリーにまともについて行くことをあきらめてしまう面白さもある。ただ、あまりにおあわただしいットつなぎでよけいなショットをどんどん削除し、時に、必要以上ではないかと思われるほどの手短な展開の連続で、全体に平坦な作りになっているのも事実で、同様の吹っ切れた作品である「キック・アス」と比べるとできばえはかなり劣る。

とはいってもこのエドガー・ライトという監督、独特の映像世界は好きな人には癖になる魅力があることも確かで、笑える時は爆笑してしまう魅力も満載なのが良いですね。
仰々しい感想はさておき、こんな映画もあるものだと今更ながらうれしくなってしまうひとときでした。

「紅の拳銃」
赤木圭一郎の遺作、赤木圭一郎主演作品の中では評判のいい一本である。
映画は、画面に向かって石岡(垂水吾郎)が「今時、殺し屋を仕事にするなどというのはあり得ない・・」などと語る姿から始まる。この導入部が実に独特で有る意味優れた部分でもある。そしてカメラが移ると芦田伸介扮する小寺が座っている。そして、腕のいい殺し屋を手配するように石岡に語る場面から本編へ。

バーで鋭い視線の男中田(赤木圭一郎)を見つけた石岡は彼に「殺し屋にならないか・・」と誘う。あっさり引き受ける中田の姿に石岡は彼に備わった才能を見抜く。そして中田を一人前の殺し屋にするべく拳銃の使い方などを教え始める。

ストーリーの展開は次々と唐突に進んで行くし、なんの脈絡もなく次のシーンにつながっていく展開はかなり雑ではあるが、これもある意味、当時のプログラムピクチャーらしいバイタリティととらえると実にうれしくなる作品でもある。そんな雑な演出の中にも、光の移り変わりで画面を演出する冒頭のダンスホールのシーンなど特筆すべき工夫もあちこちにこらされている。

結局、殺し屋として神戸に乗り込んだ中田であるが、実は暴力組織を一網打尽にするべく入り込んだ刑事であったという結末と、目の見えない石岡の妹が手術で回復し、電車の中で本当の姿を知らない中田とすれ違うラストなどサービス満天のシーンも楽しませてくれる。

映画のできばえ云々よりも、まさに娯楽としての映画全盛期の一品であり、次々と現れては消える大スターたちの顔ぶれを楽しむという面白さが一つの楽しみになる作品であるという意味からも見終わってうれしくなってしまう一本であったと思います。これが映画ですね。