くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジュリエットからの手紙」「ザ・ホークス ハワード・ヒュ

ジュリエットからの手紙

ジュリエットからの手紙
すごく素敵でいい映画に出会いました。こういう映画は本当に久しぶりなんですよね。
映画が始まるとまるでスキップしたくなるような軽やかでテンポよくタイトルが始まり、次々とキスしている幸せそうなカップルの写真や絵、イラスト、アニメが写されていきます。そして物語が始まるとニューヨーク。主人公のソフィ(アマンダ・セイフライド)が」取材をしている。彼女は雑誌の事実証明を通じて記事をつづっていく記者の卵。

そして彼女は婚約者のビクターとイタリアのヴェローナへ婚前旅行に出かけます。ところが、まもなく自分のレストランを開業する予定のビクターは現地についても食材や料理のことに熱心でソフィを観光する気配もない。最初はついていったソフィですが、とうとう自分一人で観光をすることに。そしてやってきたのはジュリエットの家という観光地。そしてそこの壁には世界中の女性が恋の悩みや自身の思いを手紙にして張り付けているところがありました。

そして、その手紙は数人の女性によって返事をっかれていることを知ります。そのジュリエットの秘書たちのところで手伝うことになったソフィはある日、張られている手紙の壁のブロックの奥に50年前、ロレンツォという男性宛のクレアという女性からの手紙を発見。そして期待もせずに返事を書くとなんと、クレアがイギリスからロレンツォを探しにやってきたのです。

クレア、演ずるのはヴァネッサ・レッドグレイブ。彼女が登場するだけで映画に格が備わるからすばらしいものですね。そして彼女と一緒にやってきたのが、ちょっと堅物ながら実に優しい孫のチャールズ。

この映画の素敵なところはその登場人物がそれぞれとても魅力的で好感であるところです。一見、出世指向のキャリアウーマンであるソフィですが、とっても心優しいかわいらしい女の子だし。自分勝手で仕事のことばかり考えているように見えるビクターも実は本当にまじめで熱心かつ情熱家でソフィのことも心底愛している。さらに、すでに人生の終盤という年齢にも関わらず前向きに積極的に生きるクレア、そしてどこかまだまだ少女時代の初な心も残している。そして、孫の青年チャーリーもまた、見るからに紳士的でやさしい。よくもまぁ、これだけ見事に素敵なキャラクターを生み出したものだと感心してしまいました。

さらに、この映画、背後に流れる音楽や歌が本当に軽やかで心地よい上に、わずかにラテン系の迫力もある。そんなリズムに乗せてぽんぽんと展開するストーリーや主人公達の移動シーンの楽しいこと。

目指すロレンツォを探すためにイタリアの田園地帯を北に東に南に西にと走り回る三人。行く先々で様々なロレンツォに出会い、最後の最後にすでにこの世にいないロレンツォにさえたどり着く。ここからが映画の転換点。

あきらめかけてお別れのワインにとブドウ畑に乗り入れたところで若い青年のロレンツォを見かけたクレアはそこにかつてのロレンツォの面影を発見。見事再会を果たす。そしてあれよあれよと仲がよくなる。ロレンツォは妻を亡くしており、クレアは夫がいない。

めでたしめでたしでソフィはアメリカに帰ることに。前夜にふとしたはずみでキスしてしまったチャーリーは、一度はソフィを見送るもクレアに促され彼女を追いかける。しかしそこで見かけたのはビクターとベランダで抱き合うソフィの姿。仕方なく車をUターンさせ去っていく。どこかビクターとの関係に疑問が残るソフィが通りを見下ろすと去っていくチャーリーの車。まさかチャーリーの車とも気がつかずアメリカに戻る。

戻った彼女に届いたのがロレンツォとクレアの結婚招待状。ようやく、意を決したソフィはビクターに別れを告げに行く。そしてしっかり抱き合うビクター。ちょっとかわいそうながら、この別れのシーンも非常にさりげなく、そしてビクターもいいイメージで消える下りも見事である。

イタリアにやってきたソフィ。式場でチャーリーに婚約解消した旨を告げ、二人はまるで「ロミオとジュリエット」さながらにバルコニーのしたでキスをしてカメラがずーっとパンアウト。「the end」と文字がでる。もう拍手ものである。こんなきれいなラブストーリーは何年ぶりか思った。

様々なところにオーソドックスなラブストーリーのシーンがちりばめられていて、この監督、かなり映画を勉強していることがわかる上に、音楽のセンス、それにあわせる映像演出のセンスが抜群にうまい。これは才能と呼ぶしかないですね。本当にいい映画でした。

「ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男」
伝説の大富豪ハワード・ヒューズの自伝をねつ造し、一躍時の寵児となった主人公クリフの物語。ラッセ・ハルストロムの秀でた映像演出が光る一本、しかもサスペンスフルかつミステリアスな物語に引き込まれる秀作でした。

これといって目立つ仕事もしていない主人公クリフはある日、表舞台に近年でていない伝説の大富豪ハワード・ヒューズと個人的に知り合い、その自伝の執筆を頼まれたという架空の物語をでっち上げることを思いつきます。

そして相棒のディックとあるようなないような物語を半ば法を犯しながら資料を集め、さらにはハワード・ヒューズの手紙をねつ造、彼からのメッセージさえもテープに吹き込んででっち上げてその信憑性を創造していくのです。

最初は半信半疑だった出版社の上層部もさすがに彼の示す証拠にうならざるをえなくなりますが、いよいよ本が出版される下りに近づくとあまりのプレッシャーにディックはすべてを明かすと崩れていく。それをやや姑息な手段で彼の弱みを握り、彼を身動きできなくしていくクリフ。

こうして本は出版間際にこぎつきますが、いつの間にかクリフは自分のでっち上げたハワード・ヒューズとの個人的な親交が妄想と現実の区別が狂い始めていきます。

そんなとき、ハワード・ヒューズ本人からのメッセージですべてが嘘であることがばれ、なにもかもが元にもどろうと動き出すクライマックス、クリフの鬼気迫る姿が絶妙の映像で描かれる下りは圧巻。

デジタル映像も駆使したテクニカルな演出はまさにラッセ・ハルストロムならではで、サスペンスフルな物語を見事に映し出していきます。
次第に追い詰められていく主人公の緊迫感がやがて妄想を呼び、自分に対する強迫観念を生み出していく。そして、最後には自分の行った自伝執筆さえもがハワード・ヒューズに操られて結果ではないかとさえ追い詰められていくさまは鬼気迫るものがあります。

結局一年余りの投獄となるのですが、自分が巻き込んだディックたちを守ることを条件にすべて自分が罪をかぶるという主人公の潔さ、そして出獄後愛する妻と傷害暮らしたという後日談がほほえましくもあるいい映画でした。