くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「実録阿部定」「(秘)色情めす市場」

実録阿部定

「実録阿部定
日活ロマンポルノ映画時代の名匠田中登監督作品、大島渚監督が「愛のコリーダ」を発表する一年前に公開された傑作である。
というふれこみで見に行ったが、解説通り見事な作品でした。

全編、充実した映像づくりで圧倒されてしまう上に、演技力抜群の宮下淳子の存在感がすばらしい。真っ赤な長襦袢、そして窓の外の色彩をオレンジや赤に染め、一方で室内の色合いをふるびた黒で写す。

ほとんど、定と吉蔵が寝起きする旅館の中のみで描ききるというスタイルで、時々カメラが外にでても窓の下の通りくらいのものである。その息苦しさが、さらに定の情念をひしひしと伝えてくる。

二人の絡み合いのシーンを繰り返し繰り返し描く一方で、まるで遊びのようにSEXを楽しむ二人の仲むつまじさを映し出していく。芸者に三味線を弾かせて目の前でチチクリあうユーモアあふれるシーンなども交え、緩急をつけた田中登監督の演出が冴えわたる一本でした。

真っ暗な画面に定の声が響くファーストシーンから、吉蔵を絞め殺し、一物を切り取り、さまよい歩くクライマックスまで全く息もできないほどの緊迫感が漂います。

男と女のドラマ、吉蔵に狂ったようにのめり込む定の情念が息苦しいほどに伝わってくるのが見事と呼ぶほかありません。これぞ傑作、見事でした。

「(秘)色情めす市場」
必見の一本とはよく言ったものである。田中登監督作品であるが、物語のほとんどがモノクロ映像という個性的な作品。クライマックス、主人公トメの弟実夫が姉トメと交わった後、夜明けに鶏を抱いて新世界や天王寺界隈をさまよい歩き通天閣に上り、果ては新世界の一角で首を吊る場面だけがフルカラーになる。

その後のエピローグは再度モノクロームになり、主人公が空き地で妙なおっさんと語るシーンでエンディング。

田中登監督はいわゆる映像派なのだろう。先ほどの「実録阿部定」でも非常に凝ったカメラアングルや色彩演出を施していたが、本作品でも一工夫ふた工夫したシーンが展開する。

題名はいかがわしいが、題名とは関係なく、寂れた新世界の下町で親子で売春家業をするトメの物語である。むせかえるようなゴミゴミした寂れた町並み、息苦しくなるようなあいりん地区の描写、誇りだらけの阪堺線の沿線のすがた、遙かに見える大阪城など大阪の懐かしい頃の景色もふんだんに登場する。さらにクライマックスで弟が登通天閣のシーンでは村田英雄の「王将」が流れたりする。

これもそれもサービス満点といえばそういうてんこ盛りの映画なのである。
端役で出演する宮下順子が頼りない彼氏のために体を売るも次第にその元締めの男に惚れ込み、しまいにはかつての彼氏諸とも爆死させられる下りもなかなかの展開である。

出だしの石段で会話する主人公と絵沢萠子のショットから一気にあいりん地区のショットへつなぐジャンプカット、その後のストーリー展開に時折見せるシュールな演出はとてもただの成人映画の域を遙かに越えているとしかいいようがない。やはり映画なのである。見て損のない作品でした。