くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アンダルシア 女神の報復」

アンダルシア 女神の報復

おもしろかったです。たぶん最近の日本の娯楽映画では5本の指にはいるかもしれないできばえ。出だしからラストシーンまで退屈しないし、謎解きがおもしろいし、真相で驚いてしまうし、エピローグにニンマリする。本当に楽しめました。

原作は真保裕一、前作「アマルフィ 女神の報酬」のシリーズでテレビドラマにもなった外交官黒田耕作が活躍するサスペンスミステリーです。いやぁ、前作もおもしろかったし、テレビドラマも楽しめましたが、今回はさらに上を行きました。傑作とか言うにはちょっと行き過ぎかと思いますが、本当にお薦めの一本だと思います。

映画が始まると、とある寂れたレストランで日本の財務大臣が愚痴をこぼしている。「何でこんなところへ・・」。隅には主人公黒田耕作がいるところからこれは彼のはかりごとだとわかる。そこへやってくるのがアメリカの財務大臣。どうやらこの財務大臣のひいきの店のようで、日本の外務大臣アメリカの財務大臣を引き合わせてこれから開かれるパリサミットで日本の意見を口添えする根回しに利用したらしいことがわかる。このシリーズを知らない人もこのファーストシーンで黒田耕作の力量を説明される。この導入が見事。

そして画面は変わると雪山、一人の男がスキーを滑っているが、途中からストックを捨て危険な地域へつっこんで自殺未遂をする。次のシーンでヒロイン結花(黒木メイサ)がなにやら書類を処分している。かたわらにさっきの男が血まみれで倒れている。

こうして始まるミステリアスな物語は黒田とインターポールの神足(伊藤英明)らと絡んで次第に謎の奥へと沈み込むようにストーリーが進んでいく。神足と黒田の官僚同士の確執もさらりと流し、神足の二年前の内部告発事件もあまりこだわらずに物語の本筋だけに焦点を絞った脚本が見事。そして、見え隠れするスペインのビクトル銀行とスペイン投資銀行のマネーローンダリングの展開が次第に色を帯びてくる物語構成のうまさが光る。

そして、いよいよクライマックス。結花の情報でビクトル銀行とテロ組織との取引現場で巧妙に黒田を出し抜いたかと思いきや実は結花の本当の姿をあぶり出すための罠であることを暴露していく展開は爽快な展開である。しかし、黒田メイサの普段のイメージが最後の最後まで被害者的なムードを醸し出すためにかえってミステリアスな展開が増したためによけいに結花の真の姿が暴露されたラストシーンがおもしろく見ることができました。

それに、今回は海外ロケの雄大さばかりを全面に出さず、町並みの色彩を丁寧にとらえていった美しい画面作りも作品が薄っぺらくならなかった原因ではないかと思います。それほど期待もしてなかったけれど期待以上におもしろかった。掘り出し物だったと思います