くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「風と共に去りぬ」

風と共に去りぬ

劇場上映される度に必ず見に行く生涯のベストワン作品を今回の午前10時の映画祭で再見。
何度見ても胸が熱くなるし、4時間近くある大作なのに全く間延びせず、だれない。物語のプロットそれぞれが次々とオーバーラップするように展開していくためであると今回ようやく理解できました。

毒々しいほどの初期のテクニカラーの色彩、決して一つ一つのショットに手抜きのない惜しげのないスペクタクルシーンの連続、そして、キャラクター演出の絶妙のおもしろさ、どれもこれもがまさしく映画黄金期の余裕が感じられ、この超大作がまるでプライベートメッセージを持った作品のように凝縮された充実感で満たされている。これがいわゆる古き良き時代の名作なのである。

映像の卓越した表現とか、テクニカルな演出とか、独創性あふれる画面づくりとかそんなめんどくさいものはこの時代の名作には存在しない。見ているだけでいつの間にか引き込まれる。何度も何度も見返してストーリーも熟知していてもそれでも引き込まれる。そんな魅力を持った数少ない作品なのである。

ラストシーン、霧の中で去っていくレット・バトラーに為すすべもなく崩れるスカーレット、そして、泣き崩れる彼女に今まで彼女に声をかけてきた様々な人々の声が響き始める。
「タラへ・・もう一度戻りなさい。すべてがタラにある」
そして、その声は次第にスカーレットの心にもう一度立ち上がる勇気を生み出す。そして、本当に愛していたレット・バトラーを取り戻す勇気を生み出してくれる。

「タラへ帰ろう、私のふるさとへ、そして、明日になればまた明日の風が吹く・・」

前半に比べて後半は物語の焦点は人間ドラマへ移っていく。前半の派手なスペクタクルよりも、レット・バトラーやアシュレイ、メラニー、そしてスカーレットなどなどの心のスペクタクルへと展開が移っていく。それでも前半同様、次々とわき起こるプロットの積み重ねは原作とは離れた映像の魅力に満ちている。そして、そこに、絶世の美女としてのヴィヴィアン・リーが存在し、いけ好かない男であるが頼りになるクラーク・ゲーブルが存在し、観客はひとときの夢の中に漂うのである。

複数の監督によって演出されたという独特の表現世界もあるにはあるが、そんなことより、これこそが映画だと押しまくってくる迫力はたとえスタンダードサイズであっても今の大スペクタクルでは及びもしないのである。
何度みてもすばらしい。やはり私の生涯のベストワンでした。

ちなみに、上映の最初に
「すでにオリジナルネガは消失、本編はオリジナルプリントから起こしたものですが、オリジナルプリントは一部下部に黒い帯がかかります」
と、注釈がでる。デジタル化したあと、三色に分けていたオリジナルネガを処分したのだろうか。本当に残念である。