くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「モテキ」

モテキ

私は映画の製作スタッフのプロでもないし、これといった才能があるわけでもない。だから、お前が作ってみろといわれても言い返すことなどできないが、なんともこの映画、ひどいものであった。
まず、脚本が最低な上に、映像センスのなさが目の当たりにされる大根仁監督の演出に閉口してしまう。

原作は人気コミックらしいしテレビで深夜ドラマ化もされているが、今回の映画版はオリジナルストーリーである。結局、この大根監督にはオリジナルストーリーを作れる才能がないのか、それともたまたまか、見るべきところがまったくない作品なのである。しかもストーリーもいまひとつ面白くないし、それぞれのキャストが主人公も含めてまったく生き生きとしてこない。この程度の作品を作って映画館で上映して金を取るなといいたい。

ところが、出演しているキャストは実にすばらしい。森山未來長澤まさみ麻生久美子仲里依紗と間の取り方が抜群にうまい俳優を起用したためにそれなりに物語が読めるのであるが、残念ながら、笑いのシーンで誰も笑わない。つまり演出のリズムがなってないのである。しかも俳優たちへの細かな演出が実に雑で適当なシーンが山のようにある。脚本の不出来を演出でもカバーできない適当な映画に成り下がってしまった。

物語は森山未來扮する藤本が長澤まさみふんするみゆきにほれ込んでラストはハッピーエンド。しかし、その途中で麻生久美子ふんするるみ子や仲里依紗扮する愛などと絡むという物語だが、何の意味もないシーンで彼女たちと藤本のエピソードをつづるというひどい代物、さらに、本来絡むもう一人の女性、真木よう子ふんする素子と藤本のからみがまったく見えない。さらに原作にもあるのだろうがサブカル・ネタがふんだんに取り入れられ、尻切れトンボのような省略現代語が飛び交う。しかし、それが単に耳障りにしか聞こえないもどかしさ。さらに主人公のキャラクターが主人公に見えなくなってくる。周りの登場人物もまったく意味がない。これだけひどい作品も珍しい。

映像に関していえば、前半部分の街中でのダンスシーン、まぁいいかと見ていたが、実にこじんまりとしていて、何を狙ったものかまったく不明だし、このシーンが最後まで生きてこない。さらにクライマックス、みゆきを追いかける藤本のショットで周りにシャボン玉で飾ったようなきらびやかな装飾がなされ、ラストの抱擁はカメラが回転する。なんだこりゃ、安っぽい演出にもほどがある。
これだけのキャストをそろえ、楽しめる映画にできないなら、演出家失格だろう。

大体、よほどひどい映画でもそれなりに楽しめるものだが、今回はいいところが見つからない作品でした。