くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」「スパイキッズ 4D」

猿の惑星 創世記

猿の惑星 創世記(ジェネシス)」
1968年に製作されたSF映画「猿の惑星」はそのショッキングなラストシーンにより名作としていまだに語り継がれ、この第一作を元にしたシリーズはその輪廻のような物語で未だに伝説となっている。

今回の作品はオリジナル版の原作とは全く違った完全なエンターテインメント作品である。そして、とにかくおもしろい、その一言につきる娯楽映画でした。

映画が始まって、ジャングルの中を走るチンパンジーの群、そのチンパンジーの一頭が人間に捕獲され遺伝子治療の研究をしているジェネシス社につれてこられるというファーストシーンから、デジタル映像を駆使したスピーディかつ縦横無尽に動く画面に一気に物語に引き込まれます。しかも、おもしろさのエッセンスをこれでもかと詰め込んだ丁寧な脚本で随所に1968年版へのオマージュも盛り込み、旧作を知る人にもサービスを欠かさない姿勢が実に楽しいのです。

中心になるチンパンジーの名前がシーザーであることは旧作「猿の惑星征服」同様なのですが、さらにシーザーが収容されてしまう動物の檻の中にいる一頭が”コーネリアス”(旧作「猿の惑星」でシーザーの父親になる猿の名前)という名前であったり、シーザーが最初に親しくなるのがオランウータンであったりと、旧作で猿の軍団の長で人類滅亡のなぞを知る長老がオランウータンであるという旧作へのオマージュも見所です。

認知症治療のために研究されている遺伝子操作によって生み出されたウィルスALZ112、この治験に冒頭の捕獲された猿が使われ驚異的な知能の発展を見せる。しかし、ある日、精神的に不安定だったこの猿が暴れて安楽死させられ、そのおなかに子供がいたことからこの子どもを主人公のウィルという研究員が自宅に連れ帰ります。

母親が殺されて、子供が後の猿軍団のリーダーシーザーになるという展開もどこかオリジナル版の「新猿の惑星」と同じですね。

このウィルの父親も認知症でALZ112を試すと一端は急回復しますが、その後副作用で死亡。そこでより強力なALZ113を開発します。しかし、このウィルスは猿には免疫がありますが人間には免疫がない。たまたまその実験で感染した同僚のフランクリンは徐々にこのウィルスに犯され最後には死んでしまう。

ALZ113のウィルスが蔓延していくくだりとシーザーが保護施設で虐待されながら次第に猿たちのなかでリーダーとして認められていき、そこを脱出するための作戦を緻密に立てていくサスペンス、そして猿を率いて人間社会から脱出していくスリリングなアクションシーンが見事にコラボレート、クライマックス、ゴールデンゲートブリッジでシーザー率いるチンパンジーたちが人間と繰り広げるバトルシーンは手に汗握る圧巻です。

ルパート・ワイアット監督の演出はチンパンジーをCGで再現したために縦横無尽なそして群衆的なシーンが自由自在に描けるとこになり、スピーディかつバイタリティあふれるストーリー展開でとにかくはらはらわくわく楽しめるのです。

結局、シーザーたちは自然の中に帰ることが目的で、人間を征服するわけではない。だから行き着く先は国定公園の森の中。しかし、一方で蔓延するウィルスはたまたまウィルのところを訪ねてウィルスの危険を告げようとしたフランクリンが向かいにすむパイロットの男に感染させ、その男が世界中にウィルスを広める結果になる様子がエンドタイトルで流される。

この物語の行く末は人類が滅亡し、猿が生き残るという終末思想によるエピローグとなって映画は終わります。
しかし、この映画本編自体はあくまでSFの名を借りたアクションであり、エンターテインメントとして一級品であったと思います。いやぁおもしろかった。

スパイキッズ4D:ワールドタイムミッション」
ロバート・ロドリゲス監督が大ヒットシリーズの続編をなんと遊び心満点に監督しました。
オリジナル版のカルメンとジニもすでに大人になって登場するというサービス満点の内容と、例によって子供心に戻ってしまうようなハイテンポの笑いの数々、そして、どうでもいいけどまぁちょっと入れておこうかなというような親子の愛情物語などなど、懐かしい「スパイキッズ」ワールド炸裂。

しかも3Dならぬ臭いつきの4Dとこれもまた適当なB級作品丸だしで、冒頭からあれよあれよと物語が始まります。

時間を早める機械を操るタイムキーパーという悪者に、子供ができて引退した元スパイ(ジェシカ・アルバ)と義理の子供たちを交えて大奮戦という、これということもない物語。

出だしの元スパイがタイムキーパーを追いつめる下り、実は妊娠していておなかが大きいというギャグに始まるシーンは大爆笑。そして、スピーディなアクションの後、子供が産まれるが、実は彼女、子持ちの男と結婚したばかりで義理の子供とぎくしゃくしている。

いたずら好きの姉レベッカとそんな姉に反発する弟セシルと、当初版の兄弟カルメンとジニに設定が似ていて、当然掛け合い漫才になる。

当初のオリジナルほどおもちゃ満載の新兵器はでてきませんが、安っぽい笑いと下品なネタで最後まで引っ張るロバート・ロドリゲスワールド炸裂。

出来映えはともかく、楽しめる一本でした。

「DOG×POLICE 純白の絆」
ニューヨークの映画学校で勉強をしてきたという七高剛監督の作品ということでしたので、おもしろいかなと思って見に行きました。戸田恵梨香さんも市原隼人くんも好きな俳優さんなので、失敗しても損はないかなという思いもあったのです。

映画がいきなりショッピングモールのホールのシーン、テンポのある音楽をバックに不気味にカメラがお客さんを縫うようにとらえていきます。大きく俯瞰、短いカットの後にホールの外にカメラがでたとたんに大爆発。このファーストショットが実に鮮やかで緊迫感満天。

警察が駆けつけ、野次馬を押さえる派出署警官の中に今回の主人公早川(市原隼人)。たまたま目があって逃げた男を単独で追い、捕まえたのが麻薬の売人。途中でぶつかった獣医にともなって犬の出産に立ち会い、瀕死で生まれた一匹の白い犬と出会う。

その後早川は警備犬訓練所という警察犬ではなく、背後で警備をする犬の訓練所へ移動になる。

こうして始まる警察物の映画ですが、この早川が自分の担当の警備犬としてかつて助けた白い犬シロとペアになり成長する姿と、連続爆破事件の異常犯の犯行声明から次々と繰り返される反抗へのサスペンスとがなかなか個性的な編集とストーリー構成で見せてくれます。

どこがどうというわけではないけれど、なかなかのオリジナリティあふれる演出が時折見られるのですが、冒頭の見事なシーンから次第に平凡な展開に流れてくるのが何とも残念。

クライマックス、真犯人を追いつめた早川との一騎打ちから大爆発、同僚の水野(戸田恵梨香)が駆けつけて脱出するシーンが実に平凡で残念。派手な爆破シーンをクライマックスにしたかったのはわかりますが、せっかく犯人のキーポイントに耳が聞こえないというおもしろい設定を入れたのですからもう少し生かしてほしかったですね。

群衆の中からピストルの音で犯人を見つけて、その後の追跡から大爆破までがふつうの刑事ドラマになってしまいました.。それに最後に残した爆弾が爆発するまでと水野が早川を助ける下りが余りにも嘘っぽくて、せっかくの緊迫感が飛んでしまいます。この辺までもうちょっと丁寧な演出がほしかった。

でも全体に楽しめるふつうにおもしろい娯楽映画でした。損はしませんよ。