くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ビルマの竪琴」(総集編)「親鸞 白い道」

ビルマの竪琴

ビルマの竪琴
市川崑監督の旧作の方の「ビルマの竪琴」をみてきました。
噂通りの名作。なんといっても人物の配置が本当に美しく、スタンダード画面にも関わらずパンフォーカスを多用した奥行きの深い画面の構図が登場人物の心の表情とその周辺の人物の感情を見事に表現していてすばらしい効果を生んでいる。

物語は今更であるのでふれる必要はありませんが、ビルマを舞台に、終戦間近から物語が始まり、終戦後、一人部隊に戻るべくビルマを進む中で目にした日本兵の死骸に心を痛めた水島上等兵が、僧侶となってその死体の埋葬を行うことを決意。
度重なる戦友たちの呼びかけにも固辞し、戦友たちが日本へ戻る日に、最後の別れを告げてビルマの奥地へと去っていくラストシーンが有名である。

冒頭のビルマの大地を空撮でとらえるシーンからラストで、一人奥地へ去っていく水島上等兵のショットまで、徹底的に画面の美学にこだわった市川崑の映像芸術を堪能することができます。残念ながら総集編なので所々ストーリーが飛びますが、名作の雰囲気は問題なく味わうことができます。やはり、名作とはこういうものでしょうね。

親鸞 白い道」
俳優の三國連太郎さんが自ら原作を書き脚本、監督を務め、カンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞した名作である。

とはいっても、2時間20分にわたる長尺作品で、物語が非常に観念的な内容なので、中盤はどうしても退屈になってしまいました。しかしながら、後半、都や鎌倉の魑魅魍魎のような権力争いと、仏教を利用した庶民の押さえ込み、金や権謀術策が飛び交う中で、ひたすら人々の安寧を念じる親鸞のひたむきな姿がその展開の中心になってくると、次第にそのラストへ向かって引き込まれていきます。

歴史上の人物を描いていますが、けっして、英雄視したり、超人的な人物として描かず、あくまでその素朴な人物像と身近な人間として徹底した描き方は地味ながら人間ドラマの迫力さえ感じさせてくれます。
一人の人物を描く中に、時の人間差別などの風刺も混ぜ混み、自らの欲に振り回されながら生きる権力者の醜さを取り混ぜた中身の濃い物語が、非常な充実感で迫ってくるのです。

ラストシーンで彼方へ去っていく親鸞を追って、若い僧侶が衣を投げ捨て、その衣がひらひらと舞うエンディングにこの作品のすべてが凝縮されている思いに浸ることができました。

とはいえ、カンヌ映画祭の受賞作品は私には合わないようであることを改めて実感した一本だった気がします。