くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想『河内のオッサンの唄」「自分の穴の中で」

河内のオッサンの唄

「河内のオッサンの唄」
関本郁夫と高田純の脚本がテンポよくて痛快、次々と小気味よく進んでいくストーリーは、プログラムピクチャー華やかなりし頃のバイタリティがあふれ、最初から最後まで決して飽きさせない娯楽作品として仕上がっています。

稀代のわき役川谷拓三の個性あふれるおっさんぶりが好感度抜群で、それぞれの俳優達の演技は肩の凝ることもなく素人っぽいところもありながらもそれはまた気軽に見ることができるおもしろさのエッセンスが詰まっています。

物語と言うほどのものはなく河内を舞台に喧嘩とばくちと色恋沙汰にやくざが絡んできて大暴れするだけのたわいのないストーリーにも関わらず、見終わって、決して無駄な時間を過ごしたという気分にならない。斉藤武市監督の職人技というか娯楽意識が炸裂した楽しい一本でした

「自分の穴の中で」
映画が始まると、なにやら大勢の人たちが穴をのぞいている。中に人が倒れていて、警察が声をかけるとむっくりと起き上がる。物語の主要人物小松である。雨宿りをしていたという小松の言葉であっけに取られる人々。内田吐夢監督の珍品であるこの作品はそうして始まる。空にはアメリカ軍のジェット機が飛び交う米軍基地のそばであろうか。

小松と、その友人伊原、そして病弱の志賀の三人の男友達と、志賀の妹の多美子、さらに多美子らの義母の伸子らの入り乱れた恋物語のごとくストーリーが展開していくが、いつの間にか、志賀家が借金まみれになって、家を手放さざるをえなくなるし、京都の土地の売却金をめぐって義母や多美子たちとの確執で家族が離散し始めるし、女癖の悪い井原が多美子をもてあそんで追い払われるし、小松は恋している多美子にとうとう告白できず、九州の会社に旅立ってしまうし。あげくのはてに多美子の兄の志賀は別れた妻が一夜を求めてきた翌日に死んでしまうし。なんともストーリー展開がばらばらに行く先が見えなくなってエンディングとなる。

何度も挿入されるジェット機の爆音や、ちょっと不思議なメロディの挿入曲や米軍基地拡張反対の垂れ幕やら、何もかもが支離滅裂で絡んでこない。石川達三の原作はどうなのかわからないけれどもおそらく脚本がまずいのだろうかと思う。

このれが内田吐夢監督作品かと疑ってしまうけれども、この監督にも一時スランプ時期があるので、そのころの作品と撮れば、いわゆる珍品映画と呼べる一本でした