くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ステキな金縛り」「カイジ2 人生奪回ゲーム」

ステキな金縛り

「ステキな金縛り」
三谷幸喜の才能が爆発した楽しい作品、ではありましたが、2時間にまとめて必要以上の間延びしたシーンをばっさり切っていれば傑作に仕上がっていただろうと思うと非常に残念な作品でした。

ストーリーも、ちりばめられた茶目っ気あふれるせりふやシーンも絶妙に楽しい。しかも主演の深津絵里ちゃんの抜群の間の取り方、それを生かした三谷幸喜の演出は目を見張るほどにすばらしい。幽霊裁判なるこの作品の中心の見せ所だけでなく、しっかりとサスペンスとしてみせるストーリー構成のうまさはさすがに三谷ワールドである。

単なるコメディにとどめず、しっかりと感情に訴える暖かみのあるエピソードもちゃんと盛り込んでラストまで引っ張っていく脚本のすばらしさこそ、この映画を必見のものとする最大のポイントだと思う。

出だしのアニメチックなファーストシーン、それに続く幽霊裁判を行うことになる展開の妙味、そして、つぎつぎと登場するユニークなキャラクターの数々が、次第にところ狭しと物語を語り始める。それを見事にまとめて展開していくかに見えた物語が終盤、TKOの木本扮する主人公の同姓相手が家を出るくだりで、あまりにもありきたりで平凡なせりふが飛び出してしまう。ここまで三谷幸喜がそのあふれる才能を駆使して練るに練られたせりふの数々がこのシーンだけ平凡に見えるのだ。そしてストーリーはここから真犯人登場というこの作品のクライマックスに向かうのであるが、このシーンから後が一瞬間延びし始めるのである。そして、クライマックス、この作品の最大に見せ場までを妙に引き延ばしたように見せてしまう。

これだけの作品をふつうの人が作り上げたなら絶賛できる一品であるが、いかんせんその才能を誰もが知る三谷幸喜であるからこそ残念なのである。あまりにも大きくなってしまったために映画を作るに当たっても大作にする必要に迫られたのだろうか、もっと思い切っても十分なのにそこのと頃がもったいないのである。

ついでにいうと、判決がでた後のエピローグのシーン、そこまで引っ張る必要があったかとも思う。様々なキャストをすべて登場させるための付け足しにさえ見えるのが本当に口惜しい。

全体に、本当におもしろいし、楽しい。しかし、心に残らないのである。良い映画を見たなぁとハッピーになりきれない。何度も書くが三谷幸喜作品に期待しすぎた結果の感想なのです。

カイジ2 人生奪回ゲーム」
よくもまぁ、こんなだらけた脚本を書いたものである。しかも、何の工夫もなく大作のごとく2時間以上にわたっての演出をして映画として仕上げたものだと思う。まったく、原作のあるものを映画という映像媒体に仕上げるという意味を全く理解していないスタッフが作り上げたとしかいえない駄作だった。

もちろん、原作のコミックはなかなかオリジナリティあふれる画風で個性的な作品として非常に評価している。コミックにはキャラクターの造形に始まって絵画的なおもしろさがあるのである。それを生身の人間が演じる映像に焼き直すのであればその意味を分かった上で観客を引き込まないとだめである。その意識の全くないこの映画は何だろう。

この作品の最大の欠点が脚本の組立のアンバランス。これでもかというほどに引き延ばしだらけたクライマックスの展開はなんだろう。一つクリアしたらまた次ぎ、もう良いかと思えばまた次ぎ、いい加減にため息がでてくる。その前段階のライオンのエピソードもしかり、必要か?金を作るためのみならなんで、一か八かの勝負になっている?原作がそうだからというなら、それは全く脚本を組み立てるという意味をはき違えた物書きの大失敗である。

クライマックスのパチンコシーンにおいて、主人公が余りにも無様に何度も泣きを入れる。これはキャラクターではない。その前に、明晰な頭脳でトリックを打ち破る手段を生み出したとは思えない無様さ。これではヒーローになりえない。人間が演じる映画になったときに、そこをもっと考慮すべきである。しかも、やたら理屈っぽいせりふさえでてくるかたまらない。

さらにエピローグの打ち上げシーンまでのエピソードは完全に蛇足、切れのない作品が最後までだらけてしまった。

どこをとっても、非の打ち所のない最低の超大作であった。非常に残念。