くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「1911」「マーガレットと素敵な何か」

1911

「1911
思っていた以上にしっかりと作られた歴史大作でした。一本筋の通った物語を徹底的に貫いているためにたくさんの人物が登場するにも関わらず混乱せずに最後まで見ることができるのです。しかも、見終わった後歴史大作をみたという充実感と一人の革命家孫文の姿、さらには彼を支えた右腕黄興の生きざまに感動すら覚えてしまいました。

決して映画として優れた作品ではないかもしれませんがこの作品を作ろうとしたスタッフやキャストたちの熱い思いが見直に伝わってくる良品だったと思います。

物語は辛亥革命を起こした孫文とその右腕として軍隊を指揮した黄興の二人の人物を中心に、辛亥革命の発端から中華民国の成立までを描いています。クライマックス、目的である清王朝の皇帝が退位し、孫文が臨時大総統の地位を辞する場面でエンディングを迎えますが、中国はここから100年の間、様々な争乱を経て現代に至ります。

近代中国のすべてのはじまりを丁寧に骨太に描いたこの作品、ジャッキー・チェンが演じた黄興を中心とした様々な人々をテロップで流しながら描いていきますが、その中心となる物語は常にぶれることなくストーリーの中心にし、革命に関わった人々のドラマにあまり深入りしなかったことが作品としてまとまりをつけたものと思います。少々、細かすぎるカットの連続が鼻につかなくもありませんが、それでも良質の一本だったという感想です。

「マーガレットと素敵な何か」
フランス映画のこの手のファンタジックな物語は「アメリ」以来一つのパターンであるかのオリジナリティになりましたね。

キャリアウーマンとして秒刻みで毎日を送る主人公のマーガレット。結婚間近の恋人もいて、仕事も順風満帆、毎日毎日をあるときはエリザベス・テイラーのごとく、ある時はマリア・カラスのごとくと自分に演じさせて様々な局面を乗り越えていく。とても過去を振り返る暇さえない彼女に、ある誕生日に7歳だった自分から手紙が届く。

こうして始まるファンタジックな物語は、出だしのタイトルバックからしてアニメチックな映像に満ちあふれ、軽快なリズムの音楽に彩られたまさにフランスファンタジーなのです。

軽やかな音楽に思わず乗せられてしまう私たちなのですが、ほんのわずかにテンポがずれているのか、エピソードの羅列に見えなくもない。せっかく、過去からの手紙が次の一通、次の一通と開封されながら、主人公のマーガレットが過去に葬ってしまった様々な彼女の本当の姿を思いだしていく様がちょっと弱い。

幼なじみの恋人、優しかったであろう父、そして幼い頃に離れてしまった弟、それぞれの人々との再会ももう一つ感情に訴えるものがないのもさみしい。そして、ラスト、仕事での出世が自分の本来の目的でないと悟り、クラリネットを吹く幼い自分を思いだして、かつて幼なじみと掘った穴から宝物を掘り起こして、食べ物に困る途上国の国で治水などの慈善活動をする主人公の姿で幕を閉じる。

ちょっと、現実的なラストはソフィー・マルソー自身が活動する運動を無理矢理織り込んだようになってしまって、ファンタジックで自分発見の物語の夢を壊すような結果になったのが残念なラストシーンでした。