人間の五感がなくなっていくという内容の宣伝であるから、誰もが想像するのは当然SF映画としてのイメージなのですが、何とも不思議な映画でした。
突然、世界中の人々が徐々に嗅覚をなくしていく。そして次に突然凶暴に暴飲暴食したかと思うと味覚をなくしていく。さらにまたまた凶暴に暴れたかと思うと聴覚をなくし、触覚もなくし最後に視覚もなくして映画が終わるんです。
物語の主人公はシェフをしているマイケルとその店のそばで知り合ったスーザン。二人はありきたりの展開で恋仲になり体をあわせますが、世界に徐々に蔓延する感覚の喪失が彼らにも襲いかかってくる。
一つの感覚が失われるたびに人類はそれなりに別の感覚を研ぎすましてふつうの生活をしようとするが、さらに次の感覚も失うとまたそれに適応しようとする。その繰り返しで最後に真っ暗になる。
どこか至上学的、哲学的な展開であるかにも見えますが、どうにも理解しづらい。主人公二人を通じて何かメッセージがあるのかと思えば、それもなくみんなと同じようになっていくだけ。ただ、味覚がなくなるとその触感だけで食事をしようとしたり、聴覚がなくなると触れあうという行為で接触しようとしたりと、まるでトーキー映画がサイレント映画になっていくような感覚に浸ってしまう。
つまり、様々な刺激が反乱している中では本当のものが見えなくなっているのだといいたいのかもしれない。そして、すべてを失って真っ暗になった瞬間、本当に通じあえる心と心の世界が人類に訪れるのかもしれません。世界終末を描いた作品ですが淡々と繰り返されていくストーリー展開は正直私にはしんどかった。
まぁ、ちょっと変わり種の映画で、監督の独りよがりのメッセージで終わったような感じですね。