くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ダーク・フェアリー」

ダーク・フェアリー

1973年のキム・ダービー、ジム・ハットン主演のテレビムービー「地下室の魔物」をギレルモ・デル・トロが製作、脚本をつとめ劇場版リメイクした作品である。ホラー映画独特の様々な矛盾やはてな?がちりばめられているものの、始まってからエンディングまで全く退屈せずにドキドキを楽しむことができました。なんといっても、近年のホラーに多いスプラッターが全くない正当なファンタジックなゴシックホラーだったのが一番よかった。

一台の馬車が左手からこちらへ進んでくる。そして一軒の豪華な邸宅の門の前を通り過ぎる。カメラはその門を入り、どんどん奥に進むと本棚を掃除するメイドの姿、地下室からの声に振り返り、地下へは入っていく。階段の途中にひもが引っ張ってあってそれにつまづいて落ちてしまうメイド。その上にまたがる一人の男。この家の主人ブラックウッドである。歯のない顔で迫る姿が不気味。地下室の奥にある灰を捨てるような隙間から声が響く。男はメイドの歯にノミをあてて、自分の歯とメイドから集めた歯をその灰捨ての穴の奥において「息子を返してくれ・・」と叫ぶ、そして奥のさらに奥にはいっていってそのまま引き込まれて・・・・・タイトル。

全くオーソドックスなファーストシーンですが、不気味さをそのままに描いていく導入部に引き込まれます。タイトルシーンもこれ見よがしにこの物語の魔物の正体をテロップで語っていく趣向が楽しい。監督はコミックイラストレーターのトロイ・ニウシーという人。

そして、本編へ。飛行機の中で一人絵を描いている少女サリー。空港へ着くと父アレックスとその恋人で新しいママになるキムが彼女を出迎える。どうやら実母の元で暮らしていたサリーは追い出されて父親のもとへ送られたようで、物のように扱われたサリーは寂しさを隠せない。

アレックスは最近購入した画家ブラックウッドの大邸宅をインテリアデザイナーでもあるキムと改装し、売却して利益を得ようとしている。改装中の間この邸宅に三人で住むつもりなのだ。

カメラはズームイン、ズームアウト、パンニングとほとんどとどまることなく流麗に主人公たちをとらえていく。このカメラワークが不安感をあおっていくし、時にはワンシーンワンカットのままにカメラが移動しているシーンもある。このとってつけたホラー演出もまた楽しい。

この邸宅、まるでステンドガラスのように至る所に巨大な窓があり光が射し込んで部屋の中を色とりどりに映し出していく。部屋々々それぞれに通ずるような通気抗のようなところが床のあたりにあって部屋の声がほかの部屋に漏れたりする。

着いてまもなく、裏庭を散歩していたサリーが地下室の天窓を発見。玄関ロビーの二つの左右の階段の中央のあたりにふさがれた壁を取り払うと地下室に通ずる階段が。ブラックウッド氏のアトリエであったようで、ファーストシーンの悲劇の場所であると判明。徐々に不気味なムードが漂ってくる。

そして、閉ざされたい灰捨てのような穴からささやく声、そして時折ネズミのような二本足の化け物がたくさん出歩き始める。光を怖がるこの妖精のような悪魔のような化け物がこの邸宅を恐怖に包んでいくのである。

骨と子供の歯を食べるこの化け物はサリーを引き入れ仲間にするべくことあるごとに悪さを始める。伝説ではこの悪魔は一人の人間を餌食にすると一匹増えていくらしい。このあたりの説明も昔からこの邸宅に仕えていた庭師の老人の口やキムが図書館で調べた書物などから明らかになってくる。

そして、渋っていたアレックスも地下にあるブラックウッド氏の巨大な悪魔の絵を見るに及んでこの家から脱出を決意。雨の中脱出すべく準備を始めるが、悪魔たちは最後の戦いにサリーたちの襲いかかってくる。こうしてクライマックス。

あわやサリーが灰捨て穴に引き込まれようとするところキムが捨て身で助け、自分が代わりに引き込まれてしまう。無事脱出したアレックスとサリー。後日、競売になってしまったこの邸宅を訪れサリーがキムとアレックス、三人の楽しそうな絵を玄関において、家を離れる。その絵は吸い込まれるように地下室へ。そして灰捨ての穴に吸い込まれていく。穴の置くから化け物に変わったキムの声が・・「新しい住人を待ちましょう・・・・・」

ラストはB級ホラーのごときエンディングですが、途中はなかなかの作品に仕上げているためにラストでキムが化け物に引き込まれてしまうのはなんとも切ない。普通のA級ホラーならハッピーエンドだろうが、そこはオリジナルストーリーとB級にこだわったのか、ケイティ・ホームズ(トム・クルーズ奥さん)という名の通った女優さんを殺してしまうのはちょっと後味が悪いかな?という感じの終わり方になってしまった。