くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「荒川アンダーザブリッジ」「ペントハウス」

荒川アンダーザブリッジ

荒川アンダーザブリッジ THE MOVIE」
この手の映画は時々驚くほどに自分好みの映画に出会うことがあるから見逃せない。そして、そのラッキーな出会いをしました。とっても奇想天外な世界観ですが、すごく感動してとってもハッピーになってしまいました。個人的にはいい映画だったなぁという感想です。

林遣都という俳優はちょっとお気に入りでしたが、何とも二枚目のルックスになったものだと感心。それにモー娘。時代からのファンである安倍なつみさんが映画登場でこれも楽しみの一つ。彼女については「トゥーラン・ドット」という舞台で拝見してその存在感に感動したのですが、今回もさりげないとはいえ良かった。それと桐谷美玲がなかなかいいのです。決して演技がうまいとかではないけれども原作の味をしっかりと演じていて好感。

原作は「聖☆おにいさん」の中村光。なんとポップでナンセンスながらどこかあってもいいようなリアリティ在る世界観が大好きなのですが、そんな味を飯塚健監督はみごとに実写版に再現してくれました。

まず、ふつうの価値観を捨てましょう。この映画を見るときにそう意識しないといけません。河童がでてくる。星の顔をしたミュージシャン、鉄仮面をかぶったままの双子?、鳥の頭のやくざ、そして自ら金星人となのるニノという少女などなど、ふつうにあり得ない住人たちがすむ荒川河川敷に、これまた現代の申し子のように金しか信用しない大企業のやり手の御曹司行がやってくる。どこでどうかみあうのか?とおもいきやいつの間にかすんなりかみ合ってどたばたしたコミカルなドラマの中にはまりこんでしまう。

このナンセンスなおふざけとシリアスなお涙ちょうだいが抜群のバランスで配置されたストーリー展開が見事で、そのためにいつの間にか涙ぐんでいたり、どこか爽快感を味わったりしている自分に気がつく。その意味で秀作?だったような気がする。

私は金星人ですと語るニノ(桐谷美玲)とリクという名前をもらった行(林遣都)の水の中の会話から映画が始まり。荒川河川敷を開発するために社長である父(上川隆也)に依頼されて行が荒川へ颯爽とやってくる。が、橋の上で追い剥ぎのようなのに脱がされ、そこでニノに出会う。

人に借りを作りたくないというリクにその借りを返させるべくニノは雑誌で恋愛というものを読み知り、自分に経験させてくれとリクに頼む。

こうして、かみ合いそうでかみ合わないリクとニノの切ないラブストーリーを中心に物語が始まり、リクと父の親子の物語もからんできて展開。常識が常識でなくなって、でも本当はそれが常識だったりとクールな企業マンだったリクが次第に人間的な味わいを見せてくる下りが本当に楽しい。

そして語られるのが自分の出生の秘密。母が交通事故に合い、自分の命と引き替えに彼を生んだことを知る。なぜか父の親友が国土交通大臣で、なぜか荒川の河童がものすごい権力者で大臣の首さえすげ替えられたりとめくるめくような痛快な設定もラストに近づくにつれて明かされてきて、それでも真相は分からないというお遊び満載。

荒川再開発を強行しにきた父にリクが反抗し、荒川を守り、二人が堅く抱き合ってめでたしめでたしと父はリクを残して引き下がる。能天気にまた返り咲くぞと更迭された親友の大臣が去っていくところも爽快。

そして七夕の前の日、かねてよりの取り決め通りニノは金星へ帰るべくランドセルのロケットを背負ってリクに最後のボタンである額のダイヤモンドを押してもらい去っていく。本物の金星人だったの??という展開も楽しい。二人の切ない別れに涙ぐみ、なにもかもなんかハッピーに終わって、結局みなさん善人で裏表のない人たちばかりで後腐れないし、それぞれがそれぞれにもとのままに楽しい生活に戻るようで、すごく気持ちよく映画館をでることができました。本当に映画っていいものですね。そんな心地よい一本だった気がします。

ペントハウス
これは面白かった。痛快なクライムサスペンス。始まってからラストシーンまでがあれよあれよとちりばめられたこまかなデティールに追いかけまわされ、次々とハイスピードで展開するストーリーに翻弄されながらもわくわくどきどきと楽しめてしまう娯楽映画でした。

巨大な100ドル札が底にデザインされている超高層マンションの屋上のプール。そこで一人の男アーサー・ショウが泳いでいるのを真上から捉えて映画が始まる。このマンションの最上階はこのマンションの理事でもあるアーサーの住まいペントハウスである。このマンションの支配人ジョシュが出社。彼はアーサーとネット対戦でチェスをする間柄で、経験も秘奥筆子の万syんのあらゆる住人の癖なども記憶し的確に指示しながら毎日を暮らしている。この日も出社しいつもの業務へ。主人公や主な登場人物のキャラクターを細かいカットと機関銃のようなせりふの応酬で一気に紹介する導入部がみごと。

ある日、玄関先へ出たジョシュは真正面にある不振な車から男たちが降りてくるのを見て即座に怪しいと判断、最上階のアーサーを守るべく警備室のモニターへ。ところがアーサーは何者かにトラックに乗せられ拉致される。あわてるジョシュはその車を追うが、交差点で横転。追いついたジョシュの周りにさっきの男たち。実は彼らはアーサーを捕まえに着たFBIで、アーサーは証券詐欺の疑いで逮捕される。

ところが、ジョシュは従業員の年金の運用をアーサーに任せていたために、その金の行くへが怪しくなり始める。しかも、それ以外にもドアマンの老人もアーサーに多額の出資をしていたために自殺未遂まで起こす。

保釈金で出てきたアーサーに詰め寄るジョシュたち。アーサーの部屋にはスティーブ・マックィーン愛用だったという真っ赤なフェラーリがおいてあり、切れたジョシュはその車のガラスをハンマーでぶち割る。そんなジョシュたちを解雇するアーサー。

ところが、ジョシュはアーサーのペントハウスの中央の壁が改装されていないことに疑問を持ち、そこに搾取した金を隠してあると判断。その金を奪うべく仲間を集める。電気のプロ、金庫を開けるプロなど従業員の中で一癖もある人たち(もちろん素人ですが)を集め、最後に泥棒のスライド(エディ・マーフィー)を入れて計画を進める。

そして感謝祭の日にターゲットを絞り、巧みにアーサーたちを外へおびき出し、FBIも遠ざけ、警備員もうまくごまかして忍び込みに成功、いざ壁をぶち割るが中にあった金庫を開けても空っぽ。ところが、たまたま発砲したピストルの弾がフェラーリに。なんとこの車こそ黄金でできていて、アーサーの隠し資産だった。そこでこの車を盗み出すべく奮闘し始めるジョシュたち。

一方だまされたアーサーとFBIが戻ってくる。感謝祭でごった返す周辺にまごついている間に車をビルの窓の外につるして、少ししたの階へ再度運び入れそこからエレベーターで持ち出そうとエレベーターの屋根の上に乗せる。帰ってくるアーサーたちがエレベーターに乗り最上階へ。車ごと最上階へあがってしまったジョシュたち。このはらはらどきどきの展開の面白さはその伏線や次々と編み出されるピンチ回避の手段の鮮やかさにあれよあれよと画面に食い入ってしまう。

そして何もかもばれてしまったジョシュたちはつかまる。しかし、実はフェラーリの中にはアーサーの隠し帳簿のメモが。

ジョシュの取調室で、かねてよりマンションの従業員で司法試験を目指していた女性がようやく合格、司法取引でその手帳と引き換えに全員の釈放をもとめる。なんともこれでもかと繰り出される鮮やかな展開には舌を巻いてしまいます。

そして後日。泥棒にかかわった人たちのところに次々と小包が届く。なんとばらばらになった金のフェラーリのパーツ。あのフェラーリは屋上のプールの中に沈めて隠していたというラストシーンに、それほどの驚きはないものの、痛快なエンディングで笑わせてくれました。本当に面白かった。最近でここまで緻密に組み立てたクライムアクションはなかったような気がします。

と、ここまで書いて絶賛したのですが、どうも全体に微妙にリズム感が悪い。これほど面白かったのに、波がないのです。ストーリー展開が同じテンポで次々とアイデア満載に進んでいくために、全体が平坦なのが実に残念。ちょっと抑揚をもたせる面白さがあれば一級品になった気がするのですが、そうはいっても面白かったです。