くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「吉祥寺の朝日奈くん」

吉祥寺の朝日奈くん

中田永一原作の恋愛小説を加藤章一が初監督作品して映画化した一本。普通なら見ていないかもしれない作品ですが、たまたま時間が合いたので出かけました。

とにかく、すごくチャーミングな人妻役山田真野を演じた星野真里が抜群に良い。本当にかわいくてすてきなのです。独身と既婚者という絶妙のバランスで演じるほんのささやかな微笑みや仕草がとってもすてきなのです。それに朝日奈くんとのせりふの掛け合いの間の取り方も絶妙で笑いになる一歩手前の軽いやりとりが楽しくなってくる。

この映画は明らかに星野真里でもっているような映画なのです。そして彼女が登場することで作品がとってもハートフルなラブストーリーで収まるのです。

物語の中心になる朝日奈くんが先輩に頼まれて演じる不倫劇がほんのわずかに重すぎるために途中で失速してしまうのが実に残念なのですが、そこを星野真里の笑顔で踏みとどまらせてしゃれたラブストーリーにとどめている。

吉祥寺の町並みを舞台に、その雰囲気がもう少し作品にでればよかったのかもしれませんが、そのあたりの景色のとらえ方がちょっと弱いかもしれません。

狭苦しい屋台の並ぶ飲み屋街や住宅地のそばにある動物園や遊園地という庶民的な舞台に妙に広い公園や一本流れる堀。時折写す電車の走るショットと駅の描写がほのぼのした町並みなどの雰囲気は伝わってくるのですが、ありきたりにしか見えない。、さすがに原作を映像に仕切れなかったかもしれません。でもそんな町で語られるドラマの軽快さはほめてあげてもいいような。

さて、主人公が喫茶店でコーヒーを飲んでる。女性のウェイトレスが山田真野さん。ファーストシーンからのさりげない笑顔がとってもすてきで一気に引き込まれてしまう。

そこへ飛び込んでくる痴話喧嘩をするカップル。角砂糖を投げ、いきなりいすを持ち上げた女はそのまま・・・

以前から山田真野さんに気があったかのような朝比奈くんはこの騒動の後、彼女の名前を聞く。その後、献血ルームでなんと偶然に出会ってしまうのです。

?ここで疑問が。実は喫茶店での騒動は朝日奈くんが劇団の友人に頼んで山田さんと知り合うきっかけのために仕組んだことだと最後に告白するのですが、献血ルームのことはなかった気がします。これはやはり偶然だったのかな?と、今思い返しています。

さて、親しくなった朝日奈くんと山田さん。時折メールで約束をして会うことになりますが、実はこれはすべて山田さんの夫(実は朝日奈くんの先輩)が朝比奈くんに頼んで不倫劇をでっち上げ離婚しようとしていたのです。

三歳の娘といっしょに動物園に出かけたり、娘が保育園にいる会いだに吉祥寺の堀をどこまで続いているか散歩してみたり、果ては二人で小劇場を見に出かけたりとデートが続く。いくらなんでもどう見てもとってもかわいくて言い人のような山田真野さんのような人妻がそう簡単に別の男性と何度もデートできるかなと言う疑問がないわけではなかったのですが、その真相が後々明らかになる。

終盤、夫と喧嘩をした山田さんが朝日奈くんの家に泊まり、翌朝、出かける前に山田さんの夫が妻の浮気現場を撮ろうとカメラを構えているという連絡に朝日奈くんは山田さんを守るために逆らって裏口から山田さんを逃がす。実はなにもかもが山田真野さんの夫がりこんするために朝比奈くんに頼んだことだったのです。

結局、なにもかも白状した朝日奈くんはしばらく山田さんとも離れるけれど、山田さんは夫の招待を知ることができ、朝日奈くんの人柄も知ることができたことで心が和らいでくる。

離婚後山田さん(坂本さんにもどる)が実家に帰ることになり、別れ際朝日奈くんは「もし、しばらくしてお互いが気になったらもう一度最初からはじめよう」と言ってお互いさりげなく心がつながる。

それから少しして、真野さんに言われたとおり再び演劇を始めた朝比奈くんは坂本真野さんから手紙をもらう。そこには娘の絵も同封されていた。なんか、希望が見えたようなシーンでエンディングになります。

物語の中心の不倫劇が非常に陳腐なエピソードなのが残念ですが、これも原作があるのだから仕方ない。もう少し軽いタッチで映像的に流しておけば最高のラブストーリーになったかもしれないのに、この中盤の要潤の登場場面がちょっとめんどくさいね。冒頭のリズムは本当によかったのにそこがちょっと残念な一本でした。

それにしても星野真里は抜群でした。なんか、ファンになりそうです。助演女優賞をあげたい。