いままで、相当に映画を見てきましたが何本か見逃している作品があるのです。そして、その一本がこの作品です。周防正行監督の初期の作品で、あまりホール上映も見かけないと思っていたら大映作品でした。今回京都歴史博物館で見る機会があったので遠路でかけてきました。
めちゃくちゃに面白かった。映画が始まってから終わるまで笑いの連続。次々と飛び出すひょうきんなせりふやシーンの数々にのめりこんでしまいました。バイタリティあふれる笑いの映像が爆発するという感じです。背後に流れる懐メロ音楽がそのムードに拍車をかけるように不思議な癒し効果をもたらしてくる。この絶妙のアンバランスがなんとも心地よいのです。
ジャン・コクトーが日本へ立ち寄った際に相撲を見てそれを詩的な描写で語ったことが大学の講義で説明されているシーンから映画が始まる。ゆっくりとカメラはある土俵をなめるように捉えてタイトル。ゆるい導入部分ですが、ここからどんどんコケティッシュなコミカルなシーンへとなだれ込んでいくファーストシーンとしては見事なものです。
大学のサークル勧誘の場面から物語りは本編へ。主人公山本秋平が単位が足りないと教授の部屋に呼び出される。そこで、単位を与える代わりにつかの間の相撲部入りを要請される。いやいやながら相撲部に入り、何とかメンバーをそろえて試合に出るが散々に負ける。こうしてどんどんハイスピードで物語が進んでいく。そして、あれよあれよと軽妙な笑いの中に放り込まれていく。
観客の予想される展開に進んでいくのであるが、映像はそんな観客の創造を超える速さでどんどん先へ進んでいくのである。そして時折流れる懐メロのミュージックになんともいえない甘酸っぱささえ漂わせて最高の青春ストーリーをつむいでいくのである。
そして、三部リーグから二部リーグへの入れ替わり戦となるクライマックス。なるべくして感動のラストシーンへ続くが、山本はこの相撲部を守るべく一年留年を決意。しこを踏んでいる彼のところへ清水美砂ふんする夏子がやってきて「シコをおしえて」といって土俵で一緒にシコを踏む。そしてエンディングである。
ありえないエピソードもちりばめられているがこれが映画なのだとぐいぐいと物語に引き込んでいく迫力はまさしく周防正行若き日の迫力ある演出のなせるわざと言わざるを得ない。
音楽、ストーリー展開、せりふの間のおもしろさ、何もかもが映画になっている。娯楽にあっている。それでいて、不思議とラストで感動してしまう。映画を楽しんだという充実感でいっぱいでホールを出ることができました。