くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ピナ・バウシュ 夢の教室」「海燕ホテル・ブルー」

ピナバウシュ夢の教室

ピナ・バウシュ 夢の教室」
ベルリン映画祭で絶賛された世界的舞踏家ピナ・バウシュが十代の少年少女たちを集めて代表的作品「コンタクトホーフ」を完成させるまでのドキュメンタリーです。

ドキュメンタリーは見ない主義ながら、仕事と時間の関係でタイミングがあったのでこれも縁かと思い見に行きました。食わず嫌いもいけないかなと言う思いです。

始まると舞台に並んだ男女が「第三の男」のテーマにもなったチターの音楽に乗せてタップを踊る。タイトル。

あとは本番に向けて練習する男女の姿を舞台裏にカメラが入って追っていくスタイルである。少年少女たちの過去や家庭の事情などがインタビューという形で挿入。時々、見に来るピナ・バウシュのカットが挿入される。

そして本番、エンディング。

どこをどう評するのかは私にはまだできない。前日見た「アリラン」もドキュメンタリーだが、明らかにスタイルが違う。やはりこれも映像形態の一つとして様々な形があるのだろうが、これ以上に感想を書けないのがまだまだ未熟だなと感じる始末です。

海燕ホテル・ブルー」
キャタピラー」でベルリン映画祭で話題になり、非常にメジャーになった若松孝二監督作品であるが、よくもまぁ、しゃぁしゃぁとこんな映画を撮ってくれたものである。その挑戦的な演出に拍手したい一本でした。

海が映る。一人の女が紫の傘を差して歩いている。映画はこんなちょっとシュールなシーンから始まる。

一人の男幸男が刑務所を出所、刑の内容が字幕で映される。強盗、銃刀違反、刀で7年の刑期をおえてでてきたのだ。一軒の料理屋で食事をするがすぐに吐いてしまう。

トンネルを小さな女の子が傘を差して歩いてくる。二人の男が言い合っている。どうやらこのトンネルをやってくる現金輸送車を襲うために待ちかまえている。車の前に立ちふさがり襲うが一人は逃げてしまう。残った幸男が車に乗って・・・・

出所してきた幸男はそのときに逃げたコウジのところを訪ねるが、コウジは家庭を持っている。なけなしの金を受け取り、当時計画を立てて当日やってこなかった洋次の居場所を聞く。大島にある海燕というホテルにいるという琴を聞きやってくる。

地元で道を聞くと、後ろからのショットは白いワンピースを着て傘を差した女だが前から見ると老婆で、その老婆がホテルの場所を教える。幸男の前を真っ白なワンピースの髪の長い女が歩いている。

ホテルに着くとバーのカウンターに女が座っている。洋次は当時、この女梨花のために強盗に加われなかったといって500万を用立てるからでていってくれと懇願するのだ。

この梨花という女がミステリアスで、全く言葉を発せず、夜のプールで全裸で泳いだり、突然幸男の前から消えたりする。

洋次は幸男に500万持ってくるが突然襲いかかる。しかし幸男に返り討ちにされ首を絞められ殺される。そして浜辺に洋次を埋めて自分は洋次に代わってホテルのオーナーに。

次第に梨花に毒されたかのように弱々しくなる幸男。そこへ刑務所で弟分のようにかわいがっていた正和が訪ねてきて、刑務所で計画した次の仕事を話にくるが、もう幸男にその気はない。

この梨花に地元の駐在が心奪われ、ある日、プールで泳いでいた梨花を見たもう一人の客を撃ち殺したりする。全くあり得ない展開であるが、これが若松孝二ワールドととれば納得の場面である。

この駐在、幸男に正和を何とかしようと持ちかける。そして海岸で正和を撃ち殺し、さらに幸男も撃ち殺す。
丘の上に立つ梨花のところへ駆けつけようとするが崖から落ちてしまう。ここで初めて梨花が言葉を発する。
「バカな男たち・・・・・・バカな男たち」

何かの墓の前にたつ梨花、服を脱ぎ墓の方へ進むといつの間にか消えてしまう。彼女はこの墓の亡霊だったのか?そしてタイトル、エンディング。海燕ホテルは幻想なのか、女の正体はなんなのか?バーブルーの常連客が途中で「原子力が・・・」と叫ぶのは何のメッセージか?目くるめくシュールな世界が途切れることなく繰り返される陶酔感は見るものをひきつけて離さない魅力でもありました。

火山地質の海岸を歩く梨花の姿、どこかシュールなカメラアングルなど、独特の世界が展開。強盗シーンやかつての仲間を訪ねる幸男のシーンは重厚なアングルで骨太な画面を作るという好対象な演出で異様な作品の全体像をまとめている。ストレートな作品づくりにこだわらない若松孝二の真骨頂とも呼べる吹っ切れた画面を楽しめる一本だった気がします。