くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「赤い天使」「タイタンの逆襲」

赤い天使

「赤い天使」
巨匠増村保造監督作品ですが、彼の名だたる名作群から一歩はずれたカリスマ的な作品で、完成度こそワンランク落ちるとはいえ、さすがに増村監督の女を描く視線の辛辣さには頭が下がる一本でした。

物語は第二次大戦中、天津の前線病院に主人公西さくらが従軍看護婦として赴任してくるところから映画が始まります。物語の舞台が男臭い戦場であるのいと主演の若尾文子がコケティッシュでかわいらしい容姿なので、いつもの増村監督らしい胸焼けするような女の情念が打ち消されるところがあり、それがいつもの増村作品の迫力を生み出さなかった原因ではないでしょうか。

赴任した夜に患者たちに強姦された西ですが、明日をも予想できない毎日の中での兵隊たちの行動に、一概に嫌悪感を抱かない彼女の心情が非常にクールでぞくっとする強さを生み出してきます。

前線基地の分院に転任しそこで岡部軍医と知り合って、情け容赦なく手足を切断し、即断で殺すか助けるかの判断をしていく毎日の中、彼女の心はさらに生死よりも兵隊たちの女に対する性欲の意義をみいだしていく。

自分を犯した坂本が運ばれてきて、助かる見込みがないものの輸血を懇願する下りなどぞくぞくする心理描写にはさすがに鬼気迫る彼女の姿と緊迫感あふれる最前線の状況が重なっていく下りが実にリアリティが漂います。

両手を切断された折原を町へ連れ出し、裸になって好きなように身を任せるものの、その翌日、折原は自殺する。自分の行動にある種の疑問を持つ中で岡部軍医に心を引かれていく様がつづられ物語の後半部分はこの二人の戦場でのラブストーリーのような様相を浴びてきて、ややいつもの増村作品の重苦しさが弱くなっていく。

モルヒネ中毒で不能になった岡部軍医に尽くしながら、一端は天津に戻るが再び最前線で岡部軍医と再会し、さらに恋が燃え上がっていく。そして寸断された部隊へ派遣されるにいたりさらに燃え上がっていく。

いつもの増村作品ならめらめらと音が聞こえるほどの迫力が燃え上がってくるのですが、戦場という一種緊迫した世界ではそれさえも打ち消されてしまったようです。

コレラがはやり全滅寸前の部隊に敵の夜間攻撃が迫る。モルヒネ不能になった岡部軍医を必死で看病し、禁断症状から回復させた西は一夜をともにする。やがて敵が攻撃を開始、反撃むなしく部隊は全滅、奇跡的に西は生き残るが、そばに岡部軍医の亡骸が横たわる。泣きすがる彼女のショットでエンディングになります。

反戦映画でもなく、ひたすら男と女の情念の世界を熱気あふれる演出でとらえていく増村保造監督の演出のさえは十分伺われましが、強烈なクローズアップはあまり見られず、やはり戦場シーンのスペクタクルな画面が随所に見られるためにやや散漫になった帰来があります。もちろん並の映画ではありませんし、冒頭のレイプシーン、中盤の折原に頼まれて自慰をしてやるショッキングなシーン、さらにめくるめくような岡部軍医との全裸の抱擁シーンなどドキドキする色気が漂うシーンもたくさんあって、さすがに女を描かせると超一流といえる増村保造の映像はふんだんに楽しめます。

いずれにせよ、増村保造監督ファンとしては必見の一本であったと思います。

タイタンの逆襲
レイ・ハリーハウゼンの作品をリメイクした前作「タイタンの戦い」はCGのおもしろさとスペクタクル映画の常道を丁寧にたどったストーリー展開にわくわくさせられる一本でした。

今回はその続編。ゼウスの息子で前作でクローケンを倒した英雄ペルセウスはいまや人間として妻亡き後一人息子と幸せに暮らしている。しかし、神々の国ではタイタン族の力が増し、その王クロノスが復活の機会をうかがっていた。軍神アレスはゼウスを裏切り、ゼウスの兄ハデスとゼウスをとらえ、その力をクロノスに与えてその復活を助けようとする。

父の危機にペルセウスが立ち上がり、三本の神器を集めてクロノスを倒すべく父を助けに向かう物語が今回の中心になる。前作同様、CGの使い方が実にうまくて、少年心をくすぐるような迫力あるスペクタクルシーンが満載でした。そして、前作同様、いよいよというところでペガサスに乗ったペルセウス三種の神器を集めた三双の槍をもって颯爽と現れクロノスを倒す。という展開になる。このわくわくが最高ですね。

全編、見せ場の連続というほど、次々と炎を効果的に利用した派手な戦闘シーンの連続で息つく暇もないほどに画面を見続けてしまう。ストーリー展開もスピード感満点で、これといった面倒な親子愛や神と人間の時の流れなどのメッセージが最小限に押さえられているので、ある意味薄っぺらなのかもしれませんが、スペクタクルを堪能するのに最高の効果を上げています。難をいうと、巨人との戦いなどのシーンがアップを多用しすぎていせいか折角の架空の怪物たちの大きさや不気味さが認識しにくいのがもったいない気がする。

クロノスを倒すものの、力つきたゼウスは死んで、ペルセウスと息子はさらなる戦いに備え、村に帰らず女王アンドロメダの元にとどまってエンディングになる。

続きを作ってもまた見に行きたくなる単純な娯楽映画で、とっても楽しめました。やはりこういうわくわくがあるのが特撮映画の醍醐味ですね。楽しかった。