くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「捜査官X」「テルマエ・ロマエ」

捜査官X

「捜査官X」
カメラアクションを堪能させる中国アクション映画の秀作でした。大阪アジアン映画祭で話題になりシネコン公開になった一本である。主演は金城武、そして大好きなドニーイェン。

1917年中国雲南省のとある村に物語が始まる。ここに十年前に移り住んだリウ・ジンシーは愛する妻アユーと子供たちと平和に暮らしている。紙職人を業とし、その温厚な性格は村人からも慕われている。

ある日、仕事に出かけた両替商の店に武術に秀でた悪党二人が押し入る。最初は隠れてふるえていたリウだが、必死の思いでその一人の男に突進、あれ世あれよというほどにもう一人との絶妙の格闘の末に二人ともやっつけてしまう。一見、偶然リウが暴れた結果二人の悪党が同士討ちになって死んだかのように思われたが、派遣された役人の一人シュウは、これだけ武術に秀でた男たちをしかも盗人として手配されたいるつわものを平凡な紙職人が倒したことに不振をもち、その天才的な頭脳でこのリウという男が只者ではないと判断、執拗に彼の捜査を始める。

冒頭、渦巻き線香からぽとりと落ちるショットに始まり、近世の取れたシンメトリーな画面で幕を開けるこの作品、極端に真上から見下げるショットや広い農村の姿を俯瞰で美しく捉えるシーンなど、その絵作りが実に美しい。そして、導入部のリウたちの家族のほのぼのしたシーンが次第にシュウの登場によって緊迫感を増していく展開がどんどん、画面のリズムに引き込まれる魅力がある。少々雑な脚本といえなくもないが、ぐいぐいとリードしていく映像表現の面白さがこの映画の魅力でもある。

シュウという捜査官はかつて一人の少年を捕まえたもののその温情で開放、ところがその少年が両親を毒殺し、そのときの毒を体に残したために、持ち前の優れた針の治療によって日々の生活をおくっている。しかも時に幻覚閉じて飲もう一人の自分と会話をしたり模するのだ。

リウの主体を見破るために川へ突き落としてみたり鉈で切りつけてみたりと、極端な言動に出るシュウだが、その鍛え抜かれた肉体によってリウはその正体を見せない。しかし観客はこの男が只者ではないと次第にわかってくるのです。悪党たちとの格闘シーンはまさに中国カンフーアクションの型にはまった面白さを堪能させてくれるのですが、さりげないシーンにもこのリウの隠された恐ろしさがにじみ出てくるあたり、実に手の込んだカメラ演出を施しています。

調査を進めるうちにリウは実は武藤派殺人集団のマスターの息子タン・ロンであることが判明、シュウは逮捕すべく逮捕状を手に再び村に戻ってくる。ところが、行方をくらましたタン・ロンを探していたマスターらはリウの村を襲撃してくる。カメラは一気にスピード感あふれるアクション画面に変わっていく。このリズムの転換の面白いこと。

村の祭りにかなたから迫ってくる殺人集団。村に火を放ち、マスターの妻らがリウの本当の姿を暴くべく襲ってくる。ついにリウはタン・ロンとして一気に武術を披露するくだりが実に爽快。そして、戦いの果てにマスターの妻であり、リウの母でもある女を倒したが、次に襲ってくる集団に備え、シュウはリウを仮死状態にする。しかし、それもばれ、リウは左腕を自ら切り落とし、集団との決別を訴える。しかしマスターがリウの子供たちを人質にして家にいるのだ。

最後の決戦。マスターには刃物さえも聞かず、苦戦のタン・ロンに卓越した針の技術で奇襲をかけるシュウ。そしてマスターを倒し、タン・ロンもシュウも重傷をおったものの助かって映画は終わる。

ある意味、武侠映画であり、お決まりのアクションシーンが次々と炸裂する面白さもあるのですが、延々と繰り返されるというより、時に大きくカメラが移動してマスターの妻とタン・ロンが屋根を走りぬけ巣シーンを捉えたりと非常に縦横無尽に画面が動きます。狭い牛小屋での格闘シーンがあるかと思えば広々した緑の中での格闘シーンなど映像のリズムを最大限に利用したカメラアクションが実に小気味欲スピード感満点に繰り返される様がちょっと独特のものがある。ドニー・イェンの見事なカンフーもさることながら、じわじわと迫る頭脳プレーをほどこす金城武のキャラクターも本当に好対照でおもしろい。見ごたえ満載、しかも中国武侠映画としての完成度の高さが目を引く一本でした。いやぁおもしろかった。

テルマエ・ロマエ
何の変哲もない、なんともばかばかしい物語をここまでたいそうに大作に仕上げた東宝さんに拍手したい一本でした。いたるところに笑いのエッセンスが散りばめられ、平凡なストーリーなのに、馬鹿らしくて笑っている自分がいる。テロップやおふざけを随所に散りばめて笑いを撮る演出はテレビ出身の監督に多く見られるのですが、この作品もご他聞にもれず、そういうお遊びで笑いを呼び起こしていきます。

物語はあまりにも単純。ローマの浴槽設計士ルシウスがある日、大衆浴場の割れ目から引き込まれて現代にタイムスリップし、そこで現代の大衆浴場に驚愕し、ローマに戻って斬新な大衆浴場テルマエ・ロマエを次々と生み出していく。そこに当時のローマの皇帝ハロリアヌス帝の物語やさらには現代で知り合った真美の物語が絡んでくるというもの。

それぞれの登場人物の描写が希薄でなんにも深みも重みもないキャラクターにしか見えないのは物足りないとはいえ、ちょっと大作になったテレビドラマとして楽しむなら十分なできばえだったかなと思います。本当にげらげらと笑えたのだからそれでいいんじゃないでしょうか。

ローマの景色もCGを交えているかもしれませんが、違和感なく見ることができたし、スケール感はまったく感じられなかったけれど無難に仕上げているあたり、さすがにテレビ畑の監督らしい卒のない演出だったと思います。これが映画か?といわれればそれまで、期待しすぎてはいけません。

まぁ。私としては大好きな上戸彩ちゃんが久しぶりにスクリーンで見れただけで十分だし、エピローグで入浴シーンまで楽しめたのだからそれ以上申し分無しです。
映画自体はこれという感動もないぺらぺらの映画でしたが、とにかく笑えたのですからいいじゃないですか。損はしたと思いません。