くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「1000年刻みの日時計 牧野村物語」「ニッポン国古屋敷

1000年刻みの日時計

「1000年刻みの日時計 牧野村物語」
ドキュメンタリー映画の名作として知名度の高い一本ということなので、映画ファンとしてみておくべきかと思い見に行きました。

山間の牧野村に13年間生活した監督の小川伸介がその集大成として撮りあげたフィルムを編集し完成させた作品で、ノンフィクションの部分の前半と、時折挿入される再現ドラマが中心になる後半とが不可思議な雰囲気でマッチングした作品です。

太陽が山間から昇るシーンがハイスピードカメラでとらえられタイトル。稲を育てる際の研究を描き、数々の資料を交え分析しながら写される前半部分は、まさに農作業の中にカメラが入り込んだ非常にリアリティのある映像になって、どこかサスペンスフルでさえあります。

そして、この村の民話や伝説を再現しながら描かれる後半部分には田圃で発掘された縄文時代の土器のエピソードなどが挿入されて、古きいにしえの昔からのこの村のロマンを映し出し、さらには近年の言い伝えまで含めた伝奇的な展開が進んでいきます。クライマックスはかつて起こった一揆を再現し、その評定のシーンに田村高広などを迎えたドラマティックな展開で締めくくっていく。ドキュメンタリーが常にありのままをとらえるだけにとどまらない自由な映像表現方法による、ロマンあふれる映像演出が見所の一本でした。

ニッポン国古屋敷村
こちらもドキュメンタリーの名作の一本です。

今や村民がいなくなったといわれる山形の山間にある古屋敷村を舞台に、前半は農業がその自然の厳しさ故に思うように営めない様子を科学的に分析する。流れ込んでくる冷気ゆえにほとんど稲が実らない現状。どうしようもない現実の中で炭焼きを続ける男の姿などが描かれていく。

後半は時代をさかのぼり、この村で一代を築いていった家族の姿やさまざまな家族の歴史を語っていく。その中心になるのはやはり第二次大戦時代の出征した人たちの語るリアリティのある体験談である。かなりの長時間のインタビューながら全くだれてこないほどの緊迫感と心に訴えかけてくるものがあります。

蚕の養殖で裕福な生活があったひとときも語られる一方で、出征した人々が語る戦争に対するメッセージも交えられた終盤は鬼気迫るものがあります。

オープニングとエンディングにイラストを使い、ドキュメンタリー映像の中に作品としてのこだわりを見せる小川監督の姿勢に親近感を覚えてしまいます。

今日みた二本はいずれも3時間を超える長尺作品なので、完走できるか不安でしたが、特に二本目の「ニッポン国古屋敷村」は噂に違わず全く退屈しなかったので何とかみることができました。

ドキュメンタリー映画についていろいろ分析して感想を書くほどの教養もないので、見たままの気持ちをつづってみました。正直なところやはりドキュメンタリーはふつうの商業映画に比べてしんどいですねやっぱり。