くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ムサン日記〜白い犬」

ムサン日記〜白い犬

様々な映画祭で賞賛を浴びた韓国映画の話題作。監督はパク・ジョンボム。自身の親友の実話を元に映画化した作品ということである。

話題になったという評価はある程度理解できる作品ではありました。全体に非常に地味な内容のいわゆる自主映画に近い作品です。脱北者についてそのリアリティな現実を据え置いたカメラで延々ととらえたり、手持ちカメラで映像を作り出したりとドキュメンタリー風の映像が展開する。

北朝鮮から脱北してきた主人公スンチョル。なにをしても要領が悪く、時に迫害され、時にさげすまれる姿を描く一方で同じ部屋に住むギョンチョルは違法な北朝鮮への送金で利益を享受し、適当な人生を送っている。この二人の対照的な物語を描くことで脱北者の現実を描いているかのようであるも、それぞれの現実をそのままの姿で語っていく姿は正直やるせないほどに現実的で、一方で韓国側からの視点が見え隠れしないわけでもないのが気になります。

教会で見かけるスギョンという女性に恋心を持つシーンなども交え、中盤から一匹の雑種犬を飼うようになるスンチョルの姿はわびしいほどに哀れでもある。ラストシーンにも意味ありげに登場するこの真っ白な雑種犬、もう少し前半からしっかりと物語のキーポイントに使っておいた方がよかった気がなくもありません。せっかくのスパイスがちょっともったいない気がする。

結局、送金でミスをしたギョンチョルはアメリカに脱出することを決意するが、スンチョルは彼と別れることを決意。スンチョルはギョンチョルに頼まれた彼の金を届けずに、自分を見ぎれいにして教会の聖歌隊にはいり、スギョンのつとめるカラオケ店で一緒に働くことになる。ところがその夜、犬は車にひかれてしまう。それを横目にみながら、頼まれたビールを持ってカラオケ店に向かうスンチョルの後ろ姿で暗転、エンディング。

どちらかというと自主映画的な作品であり、その映像も演出も突出するほどの際だったものは見えませんでしたが、作品としてはそれなりの充実感のある出来映えだったと思います。ただ、自ら監督主演をするほどの力量があったかというと、個人的には疑問。しかも、親友の死を原案にしたために私情が入っていないと言えない部分もある。また、せっかくの重要なモチーフになる白い犬の描き方がmぅちょっと足りない気がしなくもない。是非次作は完全に演出のみの立場に立ってめいっぱい演出してみてほしいと思います。