くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「新しい家族」「処刑の丘」

新しい家族

「新しい家族」
家族の暖かい物語であるが、どこか自分たちの世界とは違ったロシア的というべき世界のお話だった。

自分の不貞のために去った主人公ハーヴェルが15年ぶりに祖父の知らせで故郷に帰ってくる。そこにはかつての許嫁との間にできた娘ポーリャがいた。さらに許嫁と別の男性との間に二人の息子をもうけていて、その許嫁はすでに亡くなっているのである。

今までの不義を反省したハーヴェルは様々な書類を集め、ポーリャを含めて三人を引き取ることを決意する。

子供たちは戸惑いながらもハーヴェルについていく姿、さらに愛犬が後を愛くるしい仕草でついていくショットなど微笑ましいシーンが展開する。非常に静かな映像で紡がれていく物語は一人の男性の父親として愛情を必死で子供たちに示そうとする姿であり、家族というものの暖かさを目の前に見せる監督の視点でもあるように思えます。

そして、出発の駅では二人の息子の実の父親に会い、涙ながらに二人を頼むといわれる。ところが家について見るとそこには自分の恋人の娘もいなくなりもぬけの殻。それでも新しい子供たち三人と暮らし始めるハーヴェルの姿がある。

ハーヴェルの同僚たちが暖かくむかえ、初日に口の利けなかった一番下の子供が声を発するという展開が実にほほえましい。

アメリカ映画を見慣れているとちょっとその設定や展開に戸惑うところもあるのですが、寒々とした雪景色などが挿入され、白夜のような夕方が写されると一種独特の家族の姿が浮き彫りになってくるような感動があります。これも様々な国の作品を楽しむ上でのおもしろさではないかなと思える一本でした。

「処刑の丘」
ベルリン映画祭で金熊賞を受賞した傑作であるが、特殊な公開がなされたのでほとんど未公開に近い作品である。

節減の中をドイツ軍に抵抗するパルチザンの隊の書と華麗がが始まる。食料が尽き、このままでは抵抗も真間内と判断した隊長は二人の男に近く野村まで食料の調達をめいれいする。極限状態の中、誰も志願しなかったが、血気盛んなリューバクとちょっと胸に病のあるソトニコフがいくことになる。

こうしてこの二人の食料調達にかかる苦難の物語が前半部分。そして、たまたま隠れた農家の家で、ドイツ軍と遭遇、屋根裏部屋でソトニコフが席をしたために捕まってしまいドイツ軍に拷問を受ける部分gな後半部分となる。前半部分も今にも息耐えそうなソトニコフを必死で支えるリューバクの息詰まる行軍と後半部分の緊迫感あふれる心理ドラマで全体に非常に肩の凝るほどの重々しい展開に終始する。

特に、ドイツ軍に捕まってから、一方のソトニコフは自分の責任で農夫たちが捕まったにも関わらず、決して拷問に屈せず軍人としての信念を貫こうとするにも関わらず、一方のリューバクは要領よく敵に取り入ってまずは命を守り、その後彼らを倒せばよいという正反対の行動をとる姿を描写していく。

それぞれの考え方に決して間違いはないのだが、裏を返すと、自分の非をきれいごとで覆い隠そうとするソトニコフの行動と、ただ命が惜しいだけに見えるリューバクという人間の本音をさりげなく映し出したかに見える奥の深い演出が見られる。

クライマックスは絞首台につるされるソトニコフらと、ドイツ軍に寝返ったリューバクの苦悩、さらに彼らを裁いた判事ポトニコフの複雑な表情が繰り返されることで、人間の本質の姿がこれでもかというほどの描写でスクリーンから迫ってくる。人々の蔑みの視線に耐えられず自殺しようとするリューバクだが、それもままならない。結局、どうしようもない彼らの姿で暗転する。明らかにゴルゴダの丘で処刑されたキリストと裏切り者ユダの姿をだぶらせているが、この作品にはもっと奥の深い通俗的な人間の性が見え隠れするように思えます。

しつこいほどの雪原の描写や人物のクローズアップが繰り返される演出がとにかく重々しく、90分あまりにも関わらずとにかく長く感じられる作品でした。傑作かもしれませんが、二度三度と見たくなる映画ではありませんね。