くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジプシーは空にきえる」「カラマーゾフの兄弟」

ジプシーは空にきえる

「ジピシーは空にきえる」
詩情あふれる美しい映像を背景にジプシーたちの自由に人生を謳歌する姿が時に歌や踊りを交えて描かれていく。作品全体が美しいという言葉がぴたりの作品で、躍動感あふれる馬のショットやシルエットを多用した美しい景色、時にスローモーションを取り入れた幻想的なシーンなどが見事に一つの芸術的な映像になって昇華しています。

馬が画面いっぱいに映るショットから映画が始まりタイトル。馬泥棒で主人公のゾバールが仲間と馬を盗むが翌日軍隊に追われ、仲間を失って、けがをして倒れていると一人の美しい女性が手をさしのべる。彼女の名前はラッダ。木の枝の隙間からじっと見つめる彼女のシーンの美しいこと。そして手をさしのべ、ゾバールがその手に導かれるように体を起こすシーンの幻想的なこと。

こうして主人公ゾバールとラッダの物語が始まる。

広大な草原を走る馬の姿や、ジプシーたちが歌い踊るシーンの軽快なこと。不思議な映像のリズムが画面いっぱいを彩りながら、ラッダに心を奪われたゾバールは自由さえも犠牲にして彼女を追い求めていく。

魔女とあだ名されるほど魅力的なラッダに言い寄る男たちは数知れず、ゾバールは老人たちが彼女に曳かれると身を滅ぼすという忠告を無視し彼女と一夜をともにする。

翌日、一人残されたゾバールはラッダを追い、人生をともにすると誓うがラッダはナイフをさして自ら死に、ゾバールもナイフを突き立てられその場に倒れる。

終盤は淡々とした展開が繰り返されるので、ちょっと単調になりかけるが、ラストシーンの不思議な感動に心に残る一本になりました。いい映画でした。

カラマーゾフの兄弟
ドストエフスキーの原作の完全映画化ということである映画ということですが、いかんせん、長い。しかも、心理ドラマでもあるせいか、しつこいほどのだらだらしたシーン演出には閉口してしまいました。お世辞にも、おもしろかったと呼べる作品ではありませんでした。

解説によれば名作ということであり、映画賞もとっている作品でもあるので、作品自体は非常に隙のない緻密な映像が展開する。ロシアらしい殺伐としたどこか暗い風景をバックに描かれる物語はまさにロシア文学の世界である。しかし、せりふやシーンごとに切れがほとんどないので、全体が単調で平坦な展開に終始する。しかも長尺な作品なのでまるで業のような退屈さを味わってしまったのが正直な感想です。

クライマックスのイワンが亡霊と話すシーンやスメルジャコフと事件の真相を話すシーンはいい加減にしてほしいと思うほどにこれでもかと同じ展開を繰り返すのには参りました。

そして裁判シーン。ここで一気に締めくくってほしいのですが、これもまた二転三転だらだらと展開して結局ドミトリは犯人のまま流刑されていく。

後味も悪いのですが、長い映画をみ終わったという達成感のみが残る作品でした。