くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「トータル・リコール」(2012)

トータル・リコール

8月10日に父が急逝し、ばたばたですごした一週間が終わり、少しずつ元の生活に戻そうと久しぶりに劇場へ息子と一緒に足を運んだ。この一週間で見逃した映画はたくさんありますが、父の面影に浸る毎日にとても映画を見る気分ではなかったことも事実だった。とりあえず、復帰第一作がこの「トータル・リコール」である。

1990年版アーノルド・シュワルツネッガー主演、ポール・ヴァーフォーベン監督作品はシュールな中に複雑な見せ場の連続の物語と、火星にあこがれるという壮大な夢の実現のためにリコール社をおとづれると言う設定のために正直見た当時は頭が混乱してしまった。しかし個性的な色彩とデザインを施されたSFXの独創性はこの作品独特のオリジナリティであった気がする。

今回は労働階級と資産階級の確執というやや俗っぽいテーマを背景に主人公が現代のさげすまれた生活に嫌気が差してリコール社をおとづれるというかなり現実的な背景を元に物語が進む。そのため、フィリップ・K・ディックが得意にする不可思議で形の無いサスペンスフルなSFというよりアクション映画の様相に仕上がっていた。そのためにわかりやすい。しかしそれがこの映画を原作の魅力から少し遠ざけてしまった気がします。

とはいえ、単純にアクションと特撮を楽しめる娯楽映画に仕上がっていたし、途中で主人公が変装して乗り込んでその入り口でばれるシーンにオリジナル版のシュワルツネッガーが扮装したときの女の姿の人物がうろついていたりしてお遊びも取り入れられていて楽しめる設定になっています。

リコール社の記憶を売るというSF的な面白さは半減しているし、コリン・ファレル以下の配役陣にも灰汁の強い人が少ないので全体にはやや凡々たる作品に仕上がったようですね。ケイト・ベッキンセールの毒女の迫力もちょっとものたりないし、面白かったけれど期待以上の面白さではなかったかなというのが正直な感想です。