くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「コロンビアーナ」「ディクテーター身元不明でニューヨーク

コロンビアーナ

コロンビアーナ
リュック・ベッソン脚本ということで見に出かけた。ここにきて未だに「レオン」や「ニキータ」の世界かと思うのだが、確かにおもしろくできあがっている。

リュック・ベッソンファミリーの映画に共通して、リュック・ベッソン本人が監督をしたもの以外は総じて平坦な作品になっている。この「コロンビアーナ」も同様で、冒頭からストーリーに引き込んでいくのだが話の展開が単調なのである。

細かいカットを繰り返し、ハイスピードに次々と展開していくストーリーのおもしろさは絶品だが、緩急が少ないために、あるいはそのリズムが弱いためにひたすら突っ走っていく。

モノクロのドキュメントフィルムを細かく編集したタイトルが終わると舞台はコロンビア、二人の男がなにやら話をしていて、一人が帰るがその後をもう一人の男たちの殺し屋が追う。自宅へ戻った男は逃げる準備をするが敵のほうが素早く、逃げられないと知った両親は娘カトレアになにやら託す。そこへ踏み込んできた殺し屋たち。ここでこの少女カトレアが鮮やかに殺し屋を振り切って逃げ通すシーンで一気に引き込まれる。

そして、無事アメリカに脱出して父がいっていたおじさんの元へ行き、殺し屋になりたいといって15年後、成人したカトレアのシーンになって物語は本編へ。そして鮮やかに暗殺をこなしていくカトレアのショットが続き、FBIの追跡を逃れ目的である父の敵を殺して恋人に別れの電話をしていずこかへ消えてエンディング。

とにかく、冒頭から引き込まれ暗殺シーンや逃走シーンに目を奪われる。これは明らかに脚本のうまさである。しかし、途中の緩急の緩の部分である恋人とのショットやおじさんとのショットなどのカットも暗殺シーンなどと同様に細かいリズムで編集したためにシーンとシーンの違いが見えない。全編、緊張感でつつまれてしまってストーリーのリズムに深みが出ない。その点が唯一のこの映画の欠点になった。

とはいえ、一級品のアクション映画といってもいいできばえで、単純におもしろい。ちょっとした佳作であったかな。本当に楽しめました。


ディクテーター 身元不明でニューヨーク」
キム・ジョンイルにささぐ」なんていうファーストシーンからひたすらブラックジョークと下ネタ満載で展開。ジョークまたジョークで、笑わせようという工夫や映像リズムなど全く無視したやりたい放題に翻弄される作品でした。

笑うというより、「・・・・」と引いているうちに次のジョークが飛び出すという感じ。これがこの監督の個性なのだろうけれども一種独特のオリジナリティが画面に存在するから楽しい。

セットや舞台も決して適当なものではなくアラジーン将軍の宮廷も豪華なスケールだし、群衆シーンも決して手を抜いた演出にしていない。アメリカでのシーンもドキュメント映像を交え、そこかしこにアメリカに対する風刺もちりばめられている。

物語は「チャップリンの独裁者」的なお話で、国連で演説をしにきた主人公アラジーン将軍が自国の陰謀に巻き込まれ影武者と入れ替えられてしまう。そして民主国家として再出発する新憲法調印直前にアラジーンが登場しアメリカ的な民主主義を痛烈に批判し、独裁国家をただ悪と決めつける西欧列国を痛烈に非難する演説をして、アメリカの町で知り合ったゾーイとめでたく結婚してハッピーエンド。

アメリカのイラクへの挑発を手厳しく批判し、民主主義がすべて善であり独裁国家がすべて悪であるという偏った偏見を手厳しく風刺していく。笑いと下ネタはさすがに下品なところもあるのですが、見るからにステロタイプ化したキャラクターがばかばかしいほどに演じていくとフィクションのマジックが映画としてのファンタジーに変わっていくからすごいね。

単調にジョークやギャグが並べられるので、途中ちょっと眠くなってしまったけれど、ちょっと見逃せない一本だった気がします。